『文明崩壊』 | 定年起業のためのウェブコンサルティング

『文明崩壊』

文明崩壊

 本書は、過去に滅び去った社会、現在滅びつつある社会、そして、滅亡を免れた社会を取り上げて、滅びのメカニズムを明らかにしています。崩壊の要因は、環境被害、気候変動、近隣の敵対集団、友好的な取引相手、環境問題への社会の対応の5つとしています。

 この5つの要因は、それひとつで崩壊の原因となることはめずらしく、複数の要因が関係します。このうち気候変動は現在のところ人類にコントロールできるものではありません。近隣の敵対集団と友好的な取引相手は、政治的、軍事的、経済的なものであり、本書ではあまり深く触れられていません。

 本書では環境被害と環境問題への社会の対応を中心に論じられています。とりわけ深刻な環境問題として、天然資源の破壊、天然資源の枯渇、有害物質、人口問題をあげています。

 有害物質のひとつと考えてよいのかもしれませんが、2005年初版の本書では放射能汚染については触れられていません。チェルノブイリ事故はすでに起こっていますが、ソ連で発生したひとつの事故と考えていたのでしょう。

 本書の立場で原子力発電を考えると新しいものが見えてきます。火力発電と原子力発電を比較すると、石油とウランとどちらも有限の天然資源を使っています。石油は採掘技術の進歩により枯渇するといわれている年がどんどん先に伸びています。現在のペースで石油とウランを消費すると仮定すると、ウランが先に無くなりそうです。

 火力発電でも有害物質が発生しますが、現在の技術で処理可能です。原子力発電で発生する放射性廃棄物は、現在の技術では処理できません。どこかに長期間保管しておくしかありません。

 そのうえで、福島第一原発のような事故が発生します。事故処理は終わるどころか、放射能汚染水は増え続け、海にも流れ出ていることが判明しました。チェルノブイリ同様に事故現場をもとの状態に戻せる見込みはたっていません。

 地球という閉じられた世界の中で原子力発電を継続することは、首長の威信のために森林資源を破壊しモアイ像を立て続け崩壊したイースター島の例を彷彿させます。

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