システム開発を一括請負することに無理がある

オフィスビル

日経コンピュータ 2015年2月5日号が「オルタナティブSI」と題した特集を組んでいます。

ITベンダーが事実上の一括請負でシステムを開発する従来のモデルでは、要件定義の不備や追加開発の費用をめぐるトラブルから逃れられない。ここにきて、ユーザー企業とITベンダーが協調できる仕組みをビルトインしたシステム構築の新たなビジネスモデルへの挑戦が始まっている。

日経コンピュータでも、一括請負が原理的にうまくいかない開発方法と認めています。

一括請負がうまくいかない理由

一括請負とは、コンピュータシステム全体をまとめていくらという方法で、開発を引き受ける契約方式です。この一括請負がなぜうまくいかないかをできるだけ簡単に説明します。

コンピュータシステム全体の開発をまとめて引き受けるには、そのコンピュータシステムの内容がはっきりしていなければなりません。ところが、コンピュータシステムの内容は極めて複雑で事前にすべてを明らかにすることは、現実的に不可能です。

それでもITベンダーは、それまでの経験と勘から開発費用を見積もります。多くの場合、受注は複数のITベンダーで競われますから、見積はぎりぎりのものになります。

受注したITベンダーは、ユーザー企業と開発するコンピュータシステムについて打ち合わせをします。ITベンダーは、安い見積もりを提出していますから、可能な限り安いシステムを開発しようとします。

ユーザー企業は、システムの内容が具体的になってくるに従い、あれもやりたい、これもやりたいということが見えてきます。

システムをできるだけ簡単に小さくして、安く開発したいITベンダーと、思いついたことはすべてできるようにしたいユーザー企業の間に対立が発生します。

契約時の条件から膨れる部分は、追加の契約となり、費用とスケジュールを見直すことになります。ここでも、ユーザー企業とITベンダーの間でトラブルが発生します。

先に説明したように、契約時の条件は完璧ではありえません。あいまいな部分がたくさんあります。膨れた部分が契約時の条件に含まれているかどうか、含まれていないとしたら、追加の費用や期間はどのくらいかかるかということでなかなか合意できません。

ユーザー企業はできるだけ安く、スケジュールは変更しないことを望みます。ITベンダーは、利益をできるだけ大きくしようとします。利害は完全に対立します。

解決方法

この解決方法は、一括請負をやめることです。日経コンピュータには、一括請負に代わる方法が、5つ掲載されています。

そのうちのひとつが、「納品のないSI」です。「納品のないSI」については、以前「IT業界の救世主となるか!『「納品」をなくせばうまくいく』」に書いています。

「納品のないSI」とは、一言でいうと月額定額の技術顧問契約です。月額定額で、ソフトウェアの開発、運用、アドバイスなどを行います。準委任契約で完成責任はありません。

技術支援と似ていますが、工数提供ではないところが違います。週に1回程度、これまでにやったこととこれからやることを確認します。ユーザー企業のところに行くとは限りません。

この方法には、ユーザー企業側のデメリットとして、最初の段階で正確な費用の見積もりができないことがあります。しかし、最初の段階で正確な見積もりをすることなど、もともと不可能なことです。一括請負ではそのリスクを全面的にITベンダーが負担していただけです。

ユーザー企業としては、検討をすすめ、できあがるシステムを見ながら、どこまでの機能を実現するか、費用やスケジュールとの兼ね合いで決定していきます。最初の段階で見通すことが不可能なのですから、これが最も良い方法です。

ITベンダーとしても大きなリスクがない方法となります。一括請負では、ユーザー企業との力関係で、しばしば莫大な赤字を出して、システムを完成させていました。

なによりも「納品のないSI」は、ユーザー企業とITベンダーの間に対立がありません。よりよいシステムの完成を目指し、お互いの協力関係が生まれます。精神的な病にかかる人も激減します。

おわりに

「納品のないSI」の方法は、大規模なシステム開発には適用しにくいところが欠点です。

上流工程からきちんと仕様を確定しながら進めていくウォーターフォール型の開発ではなく、プロトタイプを作りながら進めていくアジャイル型の開発を、大規模システム開発に適用する試みが必要になります。

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