PayPalの共同創業者であり、Facebookの最初の外部出資者であるピーター・ティールが、スタンフォード大学の学生向けに行った起業の授業をもとに、『ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか』を書きました。
ここでは、一般的な起業論と異なるそのポイントを8つ紹介します。
1.テクノロジー
テクノロジーこそが奇跡を生みます。テクノロジーは、人間の能力を拡大し、より少ない資源でより大きな成果を可能にするものです。
特に企業独自のテクノロジーは、根本的な差別化が可能となり、本物の独占的優位性をもたらします。
2.タイミング
1970年にマイクロプロセッサが開発されてから、コンピュータは爆発的に進歩しました。1990年代にはインターネットが急速に普及しました。
現在に連なるこのコンピュータと通信の技術革新の時代こそ、起業にとって絶好のタイミングとなります。
3.独占
独占こそが利益の源泉です。競争を避け、独占することが成功企業の条件です。
独占企業は規模が拡大すればさらに強くなります。販売量が拡大すれば、固定費が分散されます。ソフトウェア産業では、販売量の増加に伴う原価の増加がほぼゼロであるため、規模の恩恵はより顕著です。
独占企業は自分たちの市場をいくつかの大きな市場を合わせたものと見せかけ、その独占的地位をカモフラージュします。
Googleはインターネット検索において独占的地位を築いています。それにもかかわらず、広告業界の一員と見なせば、小さな企業となります。テクノロジー企業と見なせば、さらにそのシェアは小さくなります。また、情報へのアクセスには様々な手段があると主張することもできます。
独占を築くコツには、はじめは小さな市場から始めることです。小さな市場の方が支配しやすいからです。
4.永続性
企業は将来にわたって存続できなければなりません。そのために重要なことは、キャッシュフローです。将来のキャッシュフローを生み出す力こそが、企業の価値です。
5.べき乗則
カネがカネを生むことにより、企業は指数関数的に成長します。複利による成長は、人の直感よりも大きくなります。パレートの法則と言われる、20%の人が80%の資産を所有することを忘れてはいけません。
広くまんべんなくではなく、一握りの成功する案件に投資を集中すべきです。
6.隠れた真実
誰も気づいていない価値あるものを見つけることが重要です。それが、隠れた真実です。隠れた真実は、まだまだ存在します。隠れた真実を見つけることにより、大きな利益が得られます。
隠れた真実などもう残っていないと思うかもしれません。少しずつ進んでいこうという気持ちでは、なかなか見つかりません。リスクを避け、間違いを恐れていては、真実にたどり着けません。現状に満足していては、進歩はありません。隠れた真実があれば誰かがすでに見つけていると考えるのは、あきらめが早すぎます。
世界にはまだ知られていないことがたくさんあります。探さなければ、隠れた真実は見つかりません。まだ誰も見ていない場所に隠れた真実はあります。
7.人材
スタートアップのメンバーは特に重要です。結婚相手のようなものです。メンバーの間で、企業の所有・経営・統治の3つの役割が、うまく整合していなければなりません。
企業は価値を共有する人びとの集まりで、企業文化はその姿を反映します。初期の社員には、できるだけ似通った人を集めるべきです。一人一人がそれぞれの仕事に責任を持ち、際立っていなければなりません。
8.営業
エンジニアがかかりやすい罠は、製品さえしっかりしていれば売れると考えることです。どんなに良いものでも、ただ作るだけでは売れません。
あからさまな売り込みには、誰もが抵抗を感じます。一流の営業は、売り込みだと感じさせません。
営業能力はどのような仕事でも必要です。差別化されていない製品でも、営業が優れていれば、独占を築くことは可能です。高い商品ほど営業コストは上がります。
商品の種類により、適切なマーケティング手法を選択することが必要です。トップセールスをかけるか、テレビCMを打つか、新聞広告を載せるか、口コミをねらうかなどを決定します。
おわりに
どうでしょうか?一風変わった起業論です。独占することを非常に強調しています。そのためにも小さく始めることを勧めています。起業を考えている人には参考になります。