起業するときは、個人事業主で始めるか、法人化するかで悩むと思います。
個人事業主で始めても、法人化するかどうかで悩みます。
そこで、個人事業主が法人化するメリット・デメリットをまとめておきます。
法人化のメリット
法人化には以下のようなメリットがあります。
しかし、表面的なメリットだけを見てはいけません。
入札に参加できる・許認可を受けられる
官公庁の入札や許認可では、法人化が必要なことがあります。
事業内容が法人化を求められるならば、法人化は必須となります。
融資を受けやすくなる
金融機関から融資を受ける場合は、法人化していたほうが資金調達がしやすい面があります。
個人事業主で金融機関から融資を受けようとすると、多くの場合、第三者保証人を要求されます。
信用力があがる
個人事業主よりも法人の方が信用できると考える人がいます。
特に事業に詳しくない人ほど、法人だと安心します。
ターゲットとするお客様が事業に詳しくない場合は、法人化することにより信用力をあげることができます。
人を採用する場合も、法人化していたほうが集めやすくなります。
しかし、信用力は結局、経営者に依存します。
法人の方が、個人事業よりも信用できるということはありません。
事業に詳しい人は、そこがわかっています。
そのような人に対しては、法人化することにより信用力をあげることはできません。
節税になる
法人化すると、法人税、法人住民税、法人事業税がかかります。
税額の計算は複雑ですが、全部合わせて課税所得の35%ぐらいです。
また、自分に支払った給与には給与所得控除が使えます。
社長の生命保険料、自動車、自宅兼事務所などが、経費として認められやすくなります。
一方、個人事業主の場合は、所得税と住民税がかかります。
住民税は10%ですが、所得税は累進課税となっているため、所得が増えるほど上がっていきます。
所得税の税率は最高で45%です。
住民税と合わせて、55%にもなります。
そのため、年間所得が500万円を超えたぐらいから、法人化したほうが節税になります。
また、赤字の繰越控除は、個人事業の青色申告の場合3年ですが、法人の場合9年となります。
2年間消費税を支払わなくてすむ
課税売上が1000万円以上の場合、消費税の納税義務が生じます。
しかし、法人は「2期前の売上が1000万円以上であれば消費税の納税義務が生じる」ため、原則として設立1期目と2期目は2期前の売上がないため消費税がかからない免税事業者となります。
決算日を自由に設定できる
個人事業主の事業年度は1月~12月と決められています。
法人の場合は決算日を自由に決める事が可能です。
繁忙期と決算事務が重ならないようにすることができます。
共同出資を募りやすい
法人化すると、事業資金の共同出資者を募りやすくなります。
しかし、会社を乗っ取られるリスクも増えます。
事業継続がしやすい
個人事業の場合、自分が死亡すると事業の継続はできません。
事業資産には相続税がかかります。
法人の場合は、社長が死亡しても他人が事業を継続することができます。
相続税の元となる会社の評価は複雑ですが、事業資産全体に相続税がかかるわけではありません。
ただし、会社の業績が社長個人に負うところが大きいときは、事業の継続が困難となる場合もあります。
有限責任にできる
個人事業では、借入金や滞納している税金などは、個人の負債になります。
法人化して、株式会社や合同会社にした場合は、責任は出資金の範囲となります。
しかし、銀行からの借入金などは、代表者の個人保証を負わされるのが普通です。
法人と社長が一心同体の会社では有限責任は有名無実です。
法人化のデメリット
法人化には以下のデメリットがあります。
一言で言うと法人化するとお金がかかります。
設立に費用がかかる
法人化するためには、登録免許税や公証人認証手数料などがかかります。
株式会社で24万円ぐらいになります。
社会保険が強制適用となる
健康保険と厚生年金は、個人事業では一部の業種を除いて5名以上雇用している場合のみ強制適用です。
法人化すると雇用する人数に関係なく、強制適用になります。
健康保険と厚生年金の保険料は、会社側と従業員側が折半で支払います。
従業員にとってはメリットですが、会社側としてはお金がかかることになります。
赤字でも税金がかかる
個人事業主の場合、赤字であれば所得税も住民税もかかりません。
法人化すると、赤字であっても法人住民税の均等割がかかります。
東京都の場合、均等割は毎年7万円となります。
事務作業が複雑になる
法人化すると会計処理が複雑になります。
自分でやるのはかなり困難です。
その時間は自分のビジネスに使った方が合理的です。
会計処理を税理士に頼めばお金がかかります。
社会保険などの事務処理も煩雑です。
事務スタッフを雇うとお金がかかります。
サービス料が高くなる
クレジットカードの会費や税理士の依頼費用は、法人の方が高くなるのが一般的です。
規制が厳しくなる
決算報告、役員の任期など、法人化すると規制が厳しくなります。
資産の管理が厳しくなる
個人事業主の場合、事業により得たお金は自分で自由に使うことができます。
法人化すると会社の財産と個人の財産は明確に区分しなければなりません。
会社からお金を借りる場合には、金銭消費貸借契約書を会社と交し、利息を支払う必要があります。
おわりに
法人化した場合のメリット、デメリットをまとめました。
起業するとは、法人を作ることだと考えている人もいるように思います。
法人を作るときは、メリットとデメリットをきちんと考えたいものです。
法人を作ってから、どんな事業をしようかと考えるなど順序が逆です。
起業しようと思うならば、まず自分の商品やサービスを創り、お客様を見つけて売ってみることです。
そこから、事業を改善していきます。
法人を作るのは、その後のことです。