「定年後の起業だけはやってはいけない」という意見を見かけることがあります。
しかし、よくよく読んでみると「起業をやってはいけない」と言っていることは、ほとんどありません。
例えば、『定年前後の「やってはいけない」』という本があります。
この本には、「起業だけは『やってはいけない』」という項目があります。
そこには次のように書かれています。
本書では、個人事業主のようにいくつかの仕事を掛け持ちして収入を増やしていくことを推奨しているが、起業だけは決しておすすめしない。実は私自身も定年後に起業しているが、もしいまくらい知恵があれば、起業していなかったと思う。
起業とは文字通り「事業を起こす」ことだ。ここでは法人化しているかどうかに関係なく、従業員を抱えたり、オフィスや店舗を借りたり、機材を買い入れたりなど、大きな初期投資やランニングコストが必要なケースを「起業」、自分の身1つでフレキシブルに動けるフリーランス的な働き方を「個人事業」と呼ぶこととする。
ようするに、大きな初期投資や固定費がかかる事業を始めることを「起業」と呼び、ひとりで小さく事業を始めることは「起業」とは別のものと定義しているのです。
私も定年後に大きな初期投資や固定費がかかる事業をいきなり始めることはお勧めしません。リスクが大きいからです。
定年後の起業のステレオタイプとしてよく描かれるものに、「こだわりのコーヒーショップ」があります。
定年退職した人が退職金を出し、内装やコーヒー豆にこだわり、若いころからの夢だったコーヒーショップを始めるといったものです。従業員を2人ほど雇ったりもします。
未経験の分野にもかかわらず、初期投資も固定費も大きく、非常にリスキーです。
このような起業はお勧めできません。
一方この本でも、自分ひとりでフリーランスとして、収入を増やしていくことは推奨しています。
人に雇われずに、自分の裁量で事業を進めるならば、個人事業でも起業です。
会社に雇われ、会社の方針に従って仕事をすることとは根本的に異なります。
ひとりであれば、身の丈に合った投資の範囲で、小さく始めることができます。
起業がはじめからうまくいくことはまれです。
試行錯誤を繰り返しながら、事業を発展させていきます。
なぜ、個人事業主を起業と呼ばないのか理解できません。
世の中には、大きな初期投資や固定費がかかる事業を始めることだけを「起業」と呼ぶ人がいるようです。
そういう人の「起業はやってはいけない」を真に受けてはいけません。
初めて起業するならば、小さく始めて、試行錯誤しながら、事業を発展させることが王道です。