日本の大企業や役所では、終身雇用を守るために天下りを利用していました。
ピラミッド型の組織では、昇格するに従い人数を減らさざるを得ません。
ところが社員はそれほど減りません。
すると、終身雇用を維持するためには、順次、社員を本体から放出するしかありません。
それを受け入れるための子会社や関連会社、あるいは取引先が必要になります。
一般的には、放出先で頑張っても出世することはありません。
給与もポストも決まっている場合がほとんどです。
創意工夫で生産性を高めることも付加価値を生むことも期待されていません。
特に取引先は、何かのときの「保険」として受け入れていることが多いです。
大した仕事も責任もなく、それなりの給料が保証されている状態になります。
能力も気力もある人が実力の発揮を封じ込められている状態とも言えます。
若い人から見れば、高い給与をもらいながら、働かないオジサンです。
既得権益を振りかざし、序列意識が強く、自己保身的に見えることでしょう。
この状態は日本経済を低迷させている一因になっているかもしれません。
それ以上に、本人にとっては能力を錆びつかせる原因になります。
別の会社であれば活躍できるであろう人も、
個人で独立開業すればそれなりに稼げる人も、
実力を発揮することなく萎んでいきます。
しかも、この方法で終身雇用を維持できるのは事業が拡大している時代だけです。
事業の拡大が止まれば、社員を放出する先の会社を維持することができません。
すると社内に失業者を抱えることになります。
「窓際族」が話題になった80年代前半ぐらいから、その状態が始まりました。
90年代になるといくつもの大企業が消えていきました。
最近も、メガバンクが大幅な人員削減を発表しています。
仮に今は天下りの甘い汁を吸うことができたとしても、長続きするわけではありません。
オーナー企業の社長でない限り、会社を辞めなければならない時は来ます。
現代では人生100年時代に突入しました。
退職後の人生は数十年にもなります。
ところが、天下りの甘い罠にはまってしまうと、
その前の30年以上の経験で培ったスキルも衰えてしまいます。
その前に新しい世界に飛び出すことが有利な選択となる時代です。