アメブロを運営しているサイバーエージェントの社長が書いた本です。8年前に同じ著者の『渋谷ではたらく社長の告白』を読んでいたこともあり、気になり読んでみました。ここでは、私の気づいた点を3つ紹介します。
1.サイバーエージェント買収の危機
『渋谷ではたらく社長の告白』では、会社が買収されるかどうかがクライマックスでした。本書は、その時の関係者が和解の席を設けるところから始まります。
『渋谷ではたらく社長の告白』では、会社が買収されそうな状況に、著者が苦悩していることはわかりましたが、誰がどのように買収しようとしているのか、よくわかりませんでした。
サイバーエージェントの時価総額が、保有する現金よりも安くなったため、現金目当てで買収され、会社がなくなるかもしれないということや、「村上ファンド」との関係が、本書では書かれています。
収穫逓増型ビジネスであるメディア事業を目指し、アメーバーの運営が軌道にのるまでが、本書の話です。収穫逓増型ビジネスとは、一度損益分岐点を超えれば、伸びた売上のほとんどが利益となるビジネスです。
2.ライブドア事件
著者は、ライブドア社長であった堀江さんとは知り合いだったそうですが、逮捕に際して、衝撃を受けたようすが書かれています。しかし、保釈時に一緒に鮨を食べたとか、一般的な新興市場の様子の記述にとどまっています。
犯罪に手を染めるような人には見えなかったということですが、犯罪の内容は報道されており、その複雑な手口の解説も容易に手に入ります。その犯罪や他の粉飾決算との比較等についての、著者の感想なり意見なりも、聞きたいところです。
3.アメーバー
サイバーエージェントをメディア企業にするために、アメーバーに注力することにしましたが、売上を目標からはずし、ページビューだけを目標にしています。しかし、ページビューはコントロールしにくいものです。会社の目標がページビューだけというのは、おかしなものです。
アメーバーのページビューが伸びたのは芸能人ブログのためです。それは認めながらも、技術力を高めてページビューを伸ばさなくてはならないとも言っています。これには、違和感を覚えました。技術力は、高いページビューを支えるために必要なものであり、技術力をいくら高めても、ページビューを伸ばすことにはなりません。
また、アメーバー成功の要因は、幹部を全員更迭し、トップダウンでアメーバーを推進したことにあるそうですが、そのあたりも本書ではよくわかりません。
まとめ
サイバーエージェント社長ならではの情報を期待しましたが、残念なことに感想レベルにとどまっています。次の著作では、著者ならではが知っている事実と詳細な分析を期待したいところです。