スポーツが上達するとは、練習することにより、そのスポーツに適した体の動きを筋肉が覚え、脊髄反射によりすばやく正確に動かせるようになることです。はじめは、頭で体の動きを考えながら練習しますが、繰り返し練習することにより、考えずにできるようになり、上達すると脊髄反射で動くようになります。
一度、あるスポーツに上達すると、それとは違う動きを要求されるスポーツでは、それが上達の妨げになります。バドミントンの選手だった人が、テニスをはじめるとそれが現れます。バドミントンはシャトルを打つときに、手首を返して打ちます。これが、テニスをするときに妨げになるようです。
同じようなことが、キーボードの入力でもいえます。最初は、頭でキーの位置を考えながら打っていますが、上達すると頭では別なことを考えられます。文章の内容を考えながら打てるようになります。どのキーがどこにあるかは、頭ではまったく考えません。
キーボードから日本語を入力する方式としては、ローマ字入力、カナ入力、親指シフト入力、M式入力など数種類がありますが、一度ある方式で上達すると、ほかの方式に変更することは、はじめから覚えるよりもたいへんです。脊髄反射でできるようになったことを、もう一度頭で打ち消して、別のことを反射でできるようにしなければなりません。
ましてや、自宅ではローマ字入力、会社ではカナ入力というように、複数の方式を使い分けるとなると、実用的ではありません。個人がインストールしたソフトウェアが情報を漏洩するという事件が頻発したこともあり、最近はどこの会社もセキュリティが厳しくなっています。個人ごとにエミュレータなどのソフトのインストールを許さない会社も増えています。そうすると会社では、一般的な入力方式しか使えなくなります。自宅と会社でキーボード入力方式が違うと、一つの方式で統一した場合と比較して、打鍵の早さは及ばないと思います。
日本語と英語のバイリンガルの人は、日本語を話すときと英語を話すときでは、頭のモードが変わるような気がするといいます。同じように、バドミントンをするときとテニスをするときで、脊髄反射レベルの動作を切り替えることができるのかもしれません。それができると、キーボード入力方式を使い分けるということも、打鍵速度を落とさずにできるかもしれませんが、想像する限り無理だと思います。