ITを知っているとは、どういうことか

 昭和から平成に変わったとき、多くのコンピュータシステムはその対応を行いました。あるテレビ番組では、コンピュータ画面上に表示した「昭和」の文字を「平成」に上書きしました。これを見て、なんと原始的なことをするのだと書いたパソコン雑誌の記事がありました。記事によると、一つずつ画面上で上書きしていくことは非効率で、一括して置換するコマンドを使うべきだとして、MS-DOSのコマンドを紹介していました。

 おそらく、テレビ番組では「昭和」から「平成」に変わったことを象徴する意味で上書きする画面を放送したのだと思います。実際の作業は事前に準備されており、元号ファイルのようなファイルに1989年1月8日から平成が始まった情報を追加しただけのはずです。仮にプログラム上に「昭和」の文字を使っていて、「平成」に変更しなければならない作りをしていたとしても、当日に画面上から一つずつ変更するはずがありません。事前にプログラムを修正していなければ、しばらくは「昭和」のまま運用したのではないでしょうか。

 同じころ、ある情報科学関連の大学教授が、パソコン雑誌に記事をよく書いている人と対談したところ、C shellを知らなかったと嘆いていたことがありました。C shellとはUNIXで使われているものであり、パソコンしか扱っていない人が知らなくても不思議ではありません。システムエンジニアでも、汎用機だけを扱っている人には、知らない人がたくさんいたと思います。その大学教授にとってみれば、コンピュータといえばUNIXで、コンピュータを扱う人は皆、UNIXは知っておくべきだと考えていたのでしょう。

 コンピュータで磁気テープがほとんど使われなくなってからでも、磁気テープ1巻に収まるデータ容量の計算方法は、システムエンジニアの常識だと、得々と説明した人もいました。

 コンピュータの専門家を自認している人が、他の分野のコンピュータを扱っている人に対し、自分と同じ専門分野の知識をもっていると思い込んでしまうことは、めずらしくありません。しかし、すべての分野に精通している人はいません。
 大事なことは、自分の知らないことがたくさんあることを知ることです。

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