コンピュータから人間に残された仕事

 昔は、古典といわれる文献を調査して、ある言葉がどのように使われているかを調べ上げるという学問がありました。高名な学者が何年もかけて調べ上げ、しばしば人生最大の仕事となっていました。ところが、現在では簡単な仕事です。多くの古典は電子化されており、入手も容易です。パソコン1台で、特定の言葉の抽出はすぐにできます。コンピュータが人間の仕事を不要にしてしまった典型的な例の一つです。

 チェスでは、コンピュータが世界チャンピオンに勝ち、将棋でも元名人に勝ちました。クイズ番組『ジョパディ』でも人間のチャンピオンに勝ちました。知的といわれるゲームでコンピュータは、どんどん強くなっています。

 詩歌や小説を書いたり、評価したりする仕事はどうでしょうか。私はできると考えます。言葉を文法および使用例に従って組み合わせて、目的に合わせた意味を持たせることはできます。第三者にはコンピュータが書いたものか、人が書いたものか、区別がつかない程度のものはできるでしょう。評価関数に従って評価を行い、詩歌や小説のできを評価することもできます。商品名などは、機械的に作成した言葉の中から、響きのよいものを商標登録しています。「贅沢は素敵だ」や「おいしい生活」のようなコピーも、近い将来コンピュータで作るようになると思います。商品名やコピーでは、人間に引けを取らないものができそうです。

 現在、コンピュータにやらせることのできないことは、人がどのようにしてできているのか、よくわからないことです。新しい理論を考えたり、概念を考えることがそれにあたります。力学の慣性の法則や作用反作用の法則をどのようにして考えつくのかは、よくわかりません。物の動きを観察して、慣性の法則に気づく人は多いとは思いますが、どのようにして考えつくかを説明できる人はいないと思います。作用反作用の法則はそれに気づく人自体が少ないはずです。

 また、目的を定めることもできないように思います。外部から目的を示されるのではなく、自分で定めるときにどのようにして定めるかです。自分の内面からわきあがってくる欲求をもとに定めるとしか言えないのではないしょうか。コンピュータに人間の基本的欲求と外部の条件を組み合わせて、自分の目標を定めるようにプログラムできるでしょうか。基本的欲求の強弱は人の個性であり、その個性をコンピュータに与えてやれば、あとは自分で自分の目的を定めるでしょうか。コンピュータに対し「お前の個性を入力したから、あとは自分の生存の目的を自分で考えなさい」と指示して、コンピュータが自らの生存の目的を定めるプログラムが作れるでしょうか。無理だと思います。

 結局、人間はこういった面でその力を発揮していくしかありません。

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