ネットが当たり前の時代となりました。本書は、ネットの世界で起こった出来事を俯瞰しています。
1.強者の方がネットの恩恵を受けている
ネットによる情報発信、集客などは、フォロワーが多いほど威力を発揮します。強力なツールは、元の力が強いものを更に強力にします。
ブログの月間100万PVは、普通の人ではなかなか到達しませんが、テレビで露出している芸能人は簡単に集めます。
ネットに限らず、誰が言っているかは情報の信頼度を計るひとつの目安です。有名人の発言はそれだけで影響度があります。
2.ネットでの発言は慎重に
ネットの発言は大勢の人に見られています。スクープを見つけ、炎上させようと待ち構えている人たちもいます。不用意な発言は永久に残ります。同姓同名のまったくの別人が非難を受ける場合さえあります。
3.1ジャンル1人の法則
マーケティングにおいて、対象領域で1番となることは王道です。アーリーマジョリティは、対象領域で1番のものを手に入れようとします。
同じことはネットでも言えます。一般人がネットで成功するためには、自分が1番となれるジャンルを見つけることです。
4.ネットでウケる12ヶ条
本書からネットでウケる12ヶ条を引用します。
- 話題にしたい部分があるものの、突っ込みどころがあるもの
- 身近であるもの、B級感があるもの
- 非常に意見が鋭いもの
- テレビで一度紹介されているもの、テレビで人気があるもの、ヤフー・トピックスが選ぶもの
- モラルを問うもの
- 芸能人関係のもの
- エロ
- 美人
- 時事性があるもの
- 他人の不幸
- 自分の人生と関係した政策・法改正など
- 「ジャズ喫茶理論」に当てはまるもの
最後の「ジャズ喫茶理論」とは、ジャズ喫茶を「互いの自己顕示欲がぶつかり合う場所」ととらえた理論です。玄人好みの曲をリクエストし、他の客から一目置かれたいという欲望がぶつかり合う場所です。
この「ジャズ喫茶理論」に当てはまるもの以外は、週刊誌などとたいして変わりません。人間の俗っぽい欲望を満たすものです。
「ジャズ喫茶理論」に当てはまるものが出てきたのは、実名が基本のFacebookの影響です。実名では、人は他人の目を気にします。
5.匿名と実名
匿名のネットでは、他人の目を気にしない言動を取る人が増えます。実生活では恥ずかしくてできない言動を平気でとります。それをネットの自由だと勘違いしている人もいます。
実名のネットでは、他人の目を気にした行動を取ります。前述の「ジャズ喫茶理論」が成り立つ世界になります。
6.クラウドファンディング
ネット上で活動内容や目指すところを表明し、共感してくれた人からお金を集めることも可能になっています。
7.嫌儲
ネット上にある「皆で作ったもの」を勝手に商用利用する行為は嫌われます。2ちゃんねるのまとめブログでアフィリエイト収入を得る行為や、2ちゃんねるのキャラクターを商用利用する行為などです。
音楽会社や出版社、テレビ局などの正式な著作権保有者が、権利を主張しても叩かれる場合があります。むしろ二次利用をフリーにして、将来的に自分にとって利益になる戦略をとるほうが得策です。
ネットで皆が楽しんでいるところで売り込みをするのは、野暮だという感覚があります。Facebookで売り込みが嫌われるのも同様です。
8.困った人たち
本書では、ネット上の困った人たちの代表格を3つあげています。
(1)過度な自己承認欲求を持つ人
目立つために、または感謝されたいために、異常としか思えない行為や犯罪行為を犯す人たちがいます。
(2)“愛国者”たち
“ ”付の愛国者です。「韓国・中国を極端に嫌う人」と同義です。ネット上の自分にとって都合の良い情報だけを信じる傾向が顕著です。
(3)ネット界の「エヴァンジェリスト」
インターネットが関わるだけで、とりあえず褒める人たちです。ネットに対してのんきに牧歌的な明るい未来だけを説き、マイナス面を見ようとしません。
まとめ
本書では、ネットの世界で起こったことをひと通り見渡せます。これからどうなるかは、書かれていません。著者いわく「私は自分でも呆れるほど将来を見通す目がない」ということです。
そのためか、ソーシャルメディアにおける弱いつながりのメリットなどには触れられていません。『つながり 社会的ネットワークの驚くべき力』で指摘されているように、強いつながりを持つ人だけでなく、弱いつながりしかない人からも大きな影響を受ける場合があります。ソーシャルメディアは弱いつながりを拡大する強力なツールです。