だいぶ前のことですが、朝日新聞の経済気象台というコラムに、考えさせられることがでていました。
2000年になるとコンピュータがおかしくなるので、事前に手当をしないといけないというIT会社の「脅し」で、勤め先の会社は何億円の出費を余儀なくされた。
年が明けて元旦。何事もなく、時間は流れた。「金返せ!」と叫びたくなったが、担当者を責めても仕方ないと泣き寝入りした。
この方の会社で何事もなかったのは、事前の手当てをきちんと行ったためです。2000年問題で発生した不具合は、いくつか報道されています。
報道されていない問題を含めば、いくつあったかわかりません。
難しいプロジェクトをきちんと実行し、予定どおりに終わらせると、何事もなかったかのように感じ、「金返せ!」と叫びたくなる人はいるようです。
このような人は、大きなトラブルが発生し大勢の人が何日も徹夜するようなことがあると、よく頑張ったと高く評価するのかもしれません。
以前、NHKでプロジェクトXという番組をやっていました。ほとんどが失敗プロジェクトです。失敗により大きな問題が発生し、それを解決するところがドラマになります。
優秀なプロジェクトマネージャーが、きちんと計画を立てて完遂したプロジェクトは、番組にはなりません。しかし、きちんとした評価も得られないとしたら理不尽です。
この方は、携帯電話を買い替えた時に、必要のない機能を「1ヶ月タダですから」と6つか7つつけられたそうです。
無料期間が過ぎ、1回も使わないまま、使用料が銀行口座から引き落とされたと書いています。
1ヶ月無料の必要のない機能をつけられたならば、解約方法を確認して、すぐに解約しなければいけません。1ヶ月たつ前に思い出すことは、きちんと管理していない限り、難しいことです。
解約方法が非常に複雑なものもあります。解約したつもりでも解約できていないこともあります。
また、Windows XPのサポート終了に伴い、パソコンを11年ぶりに買い替えたそうです。メールアカウントのパスワードも忘れて、再設定に2万円近くかかったと書いています。
メールアカウントのパスワードを忘れるということは、メールを使っていなかったか、パスワードを記憶させておいたかです。
セキュリティ対策は大丈夫なのか、バックアップはきちんととられているのか、心配になります。
それでも、2万円近くかかったことを「相手の『無知』につけこむ商法といえないか」と言っています。
そして、最後は次のように締めくくっています。
検索などタダで使えるサービスは魅力的だが、ITは意外なところでお金がかかる。後味の悪い思いをしているのは、わたしだけだろうか。
このような人にどのように対応するか
携帯キャリアの不要な機能の押し付けは、責められるべきものです。
しかし、メールアカウントのパスワードを忘れた人のために、パソコンを再設定する作業を相手の無知につけこむ商法ということは見当違いです。
2000年問題をトラブルなしで切り抜けた結果に対して、「金返せ!」と叫びたくなったということには、憐れみさえ感じます。
おそらく、ITについての知識や経験は、ほとんど持っていない方だと思います。
それでも少なくとも11年前からパソコンを所有し、電子メールのアカウントも所有しています。
周りの人が腫れ物にさわるような対応をして、基本的なことを伝えてこなかったのではないでしょうか。
メールは、自分でそのつどパスワードを入力して読むようにしなければ、第三者に容易に読まれてしまいます。
パソコンのセキュリティ対応をきちんとしなければ、自分の情報が漏えいする危険があるだけでなく、自分のパソコンを踏み台にされて、政府や企業を攻撃する加害者にされることもあります。
データのバックアップをきちんととっておかなければ、パソコンが壊れたときに、突然データが永久に失われることになるかもしれません。
2000年問題は、もし何の対処もしなかったならば、どんなトラブルが発生したか予想もつきません。
少なくともこれぐらいのことはきちんと理解してもらい、そのための作業を自分でできないならば、しかるべき人や会社にお金を払ってやってもらわなければならないことを納得してもらわなければなりません。
周りの人のきちんとした説明があれば、相手の無知につけこむ商法と言ったり、「金返せ!」と叫びたくなることはないはずです。