大蔵省の元財務官である榊原英資さんと、小泉政権で経済・金融政策の責任者だった竹中平蔵さんに、田原総一朗さんが加わった鼎談です。二人の意見が一致することと、意見が食い違うことを整理しました。
意見が一致すること
・日本は成熟社会となったため、高い成長率は期待できない
・国内企業が生き残る道は、海外に出て行くか、高付加価値製品を開発するかである
・今、必要なのは「増税」ではなく「減税」である
・少なくとも5年は日本国債が暴落する懸念はない
・年金は税金にして強制的に集めるべきである
・尖閣国有化は大失敗、解決には時間がかかる
・円高は続く
・ドイツもギリシャもEUを出られない
・日本はアメリカのような競争社会にも、スウェーデンのような高福祉社会にもなれない
・原発は段階的に廃止すべきである
・原発から代替エネルギーへ膨大な予算のつけ替えをすべきである
意見が食い違うこと
榊原英資さんの主張
デフレは、中国をはじめとする東アジアと「経済統合」が進んでいるために発生しており、日銀が何かやればデフレ脱却ができるというものではない。金融はもう十分に緩和されており、企業の資金需要がないためデフレが続いている。デフレを脱却する必要ない。
消費税増税で財政再建に手を打っている。TPPは、反対する必要もなく、あわてて飛び乗る必要もない。静観すべきである。
日本は、消費税20%で、実質成長率1%、物価上昇率0%をめざし、フランス型の福祉社会となるべきである。
竹中平蔵さんの主張
デフレは需給ギャップの問題で、政府が財政出動し、日銀が円を刷れば脱却する。日銀は円をもっと刷るべきである。デフレは停滞の原因であり放置できない。
消費税増税で財政再建はできない。TPPは、乗るべきであり、アメリカと一緒に中国を押さえ込むべきである。
日本は、消費税10%台で、名目成長率3%、実質成長率2%の普通の国をめざし、イギリスのような中くらいの政府となるべきである。
まとめ
デフレに対する考えが、二人は大きく異なります。本書の内容だけでは、榊原さんの「グローバル化がこれだけ進むと、物価上昇や下降は必ずしもマネタリーな現象、つまり貨幣だけの問題ではなくなってきた」という根拠は、わかりません。また、デフレ脱却は必要ないという根拠も薄弱です。
消費税については、二人とも上げるべきとは考えていますが、今は、「増税」ではなく「減税」すべきであると考えています。
本書を読めば、日本経済に関する疑問が少しは解決すると思います。