将棋でもコンピュータがプロ棋士に勝ち越しました。これは、それほど驚くべきできごとではなく、時間の問題でいずれ起こることでした。囲碁でコンピュータがプロ棋士に勝つことも時間の問題です。
チェスでコンピュータが世界チャンピオンに勝ったときから、いずれ将棋や囲碁でも人間はコンピュータにかなわなくなることは予想できました。二人零和有限確定完全情報ゲームは、機械学習により、コンピュータが人間よりも強くなります。
二人零和有限確定完全情報ゲームとは、次の条件を満たすゲームです。
・二人:二人で行われる
・零和:両者の得点の合計はゼロ
・有限:指し手は有限
・確定:偶然の要素はない
・完全情報:相手の情報は公開されている
機械学習とは、局面の有利さを判断するパラメータを、過去の棋譜を元に、ソフトウェアが自動的に生成することです。
チェスでも10の120乗といわれる局面の数をすべて調べるのではなく、局面の有利さを判断するパラメータを設けて、そのパラメータの値で指し手を選択するということは、私が学生であった30年以上前に行われていました。
そのパラメータの設定がたいへんだったのですが、機械学習により自動的に生成させることにより解決され、将棋でコンピュータが人間に勝つことができました。
将来、ハードウェアの進歩によりコンピュータが現在よりもはるかに高速になれば、完全解すなわち必勝法が見つかります。完全解は、ソフトウェア的に見つかるのではなく、ハードウェアにより力ずくで全局面を調べることで見つかると思います。
二人零和有限確定完全情報ゲームでコンピュータが人間に勝ったことよりも、クイズ番組『ジョパディ』でコンピュータが人間の世界チャンピオンに勝ったことの方がはるかにすごいことです。そのことは別の記事に書いています。
人間とコンピュータは、思考方法の原理が根本的に異なります。人間の思考は、脳内のシナプスが化学物質を出し、情報を伝達する中で行われます。コンピュータの処理は、機械的命令を1ステップずつ実行することで行われます。
人間は飛行機で空を飛べるようになりましたが、その原理は、鳥や昆虫が空を飛ぶ原理とは違います。それと同じように、原理が異なるため特徴が異なります。
コンピュータは疲れることもなく、プレッシャーに負けることもなく、正確に実行します。コンピュータで実行できることは、人間はコンピュータにかないません。
二人零和有限確定完全情報ゲームについて言えば、機械学習により局面の判断を行うパラメータの生成を、コンピュータが自動的に行う方法が考案された時点で、人間に勝ち目は無くなりました。
それでは、人間がコンピュータに対して優れている点はどこなのかということが、問題になります。答えは明確です。プログラム化できない部分です。違う言い方をすると、よくわかっていない部分です。例えば、潜在意識とか無意識と言われている部分の働きです。感情の動きも完全に解明できているとは言えません。
人間にとって分からないことがある限り、それはプログラム化できず、コンピュータがその面で人間を超えることはありえません。