スティーブ・ジョブズが「人は物を見せられて初めて、自分が何を欲していたかに気づくんだ」と言ったという話があります。だから、Appleは消費者調査などしないとも聞きます。
スティーブ・ジョブズが開発してヒットした製品は、必ずしも斬新なものではありません。Macintoshで使われたGUIやマウスは、パロアルト研究所のアルトをまねたものです。iPodの前には、数社からMP3プレーヤーが発売されていました。iPhoneの前には、Appleが破産寸前まで追いつめられるきっかけとなったNewtonがありました。
スティーブ・ジョブズがやったことは、その時点で使える技術をうまく使い、デザインを重視した製品としてまとめることです。
これは、消費者にはできません。消費者には最新の技術動向はわかりません。消費者にできることは、既存の製品の機能や性能を伸ばし、自分の生活に役に立つ製品を想像することです。また、SFで読んだことのあるものの実用化を想像することです。
消費者調査をして、消費者の望む製品を作れば売れるかといえば、そうとは限りません。適切な価格でなければなりません。消費者の望む製品を消費者が払ってもよいと思える価格で発売して、初めて売れるようになります。
消費者調査をして、消費者にいくらであれば買うかを尋ねると、かなり安めの値段となります。そのように考えると、スティーブ・ジョブズが消費者調査など無駄だと考えたことも納得がいきます。
しかし、製品やサービスの改善点は、使ってみた人でないとわからないことがあります。中には予想外の使い方をする人もいます。消費者からの苦情を製品やサービスの改善に活かすことは有効なことです。
消費者から聞くこと、聞いてはいけないことを区別しなければなりません。製品やサービスの改善点は、実際に使った消費者に聞くべきです。新製品のコンセプトはその道の専門家が考えるべきことです。