人は何かを成し遂げようとするとき、その目的を明確にし、制約条件などを考慮し、計画を立てようとします。プロジェクトマネジメントの王道です。
ところが、それでうまくいくとは限りません。コンピュータシステムの開発では、75%のプロジェクトは失敗しているといわれています。
人間の情報収集能力にも、判断能力にも限界があります。それを完全だと考えて立てた計画ではうまくいきません。
『想定外 なぜ物事は思わぬところでうまくいくのか』には、その例が山ほど出てきます。複雑なシステムは人間の手におえるものではありません。
そんな時は直感に従い、独創的な方法を試したり、泥臭く試行錯誤を繰り返すしかありません。
本書には、「フランクリンのルール」と「フランクリンの言い訳」が紹介されています。
「フランクリンのルール」とは、何か物事を決める時には賛成、反対の理由を書き出し、その理由の背景を書きとめて評価するという方法です。きわめてまっとうな方法ですが、実際には最後は気合で決めていることも珍しくありません。
あるいは、あらかじめ決まっている結論を導くための言い訳として使われることもあります。それが「フランクリンの言い訳」です。
人間には、意図や原因を見つけたがるという性質があります。理論はあとづけで考えられます。
計画的に物事を進めるよりは、周りに適応しながら進んだほうがうまくいくことがあります。生物の進化が良い証拠です。
神が計画的に生物を進化させたわけではありません。環境適応の結果が、合理的な生物の進化となっています。
意思決定の科学はないと断言されています。世界は複雑怪奇で人間にその全貌を知る能力はありません。その現実を知ったうえで、折り合いをつけていくことが、偉大な業績を生むことになります。
大規模なソフトウェア開発でも、あらかじめすべてを計画することは不可能です。それができると考えることがプロジェクトの失敗の原因です。
日本のIT企業が、大規模ソフトウェア開発を請負で開発しようとする限り、失敗プロジェクトはなくなりません。大規模ソフトウェア開発の費用をあらかじめ見積もることは不可能です。それを認めて、契約方法から見直さない限り、失敗プロジェクトを繰り返すことになります。