2014年9月6日付朝日新聞に「リニア新幹線の利点と課題」と題したコラムが掲載されていました。ちょうど『全国民が見るべき動画。リニア新幹線のバカさ加減がおもしろおかしくわかる~玉砕国家日本はどこへ行く』というエントリも見たので、リニア新幹線のメリットとデメリットをまとめてみます。
リニア新幹線のメリット
日本の鉄道技術を世界に示せる
一番のメリットは、日本の鉄道技術を世界に示せることです。しかし、費用対効果でメリットがない限り、鉄道技術者やJR東海の単なる自己満足に過ぎません。
建設業者の業務拡大、雇用増
二番目のメリットは、建設業者の業務拡大と雇用増です。しかし、リニア新幹線でやらなくても、震災対策等やるべきことは他にもたくさんあります。
人の高速移動が可能になり経済の効率性向上に寄与する
東京-名古屋間は現在新幹線で1時間40分です。それが、40分になると1時間の短縮になります。
東京-名古屋間の片道1時間の短縮がどれだけ経済効率性向上に寄与するかは判断が難しいですが、費用対効果で判断すべきことです。
リニア新幹線のメリットのようだが、そうでないもの
「リニア新幹線の利点と課題」では、メリットと書かれていますが、そうとは思えないものです。
東海道新幹線の代替
東海道新幹線が万一、一部が短期間でも使用できなくなったときの代替になるという意見があります。
東海道新幹線の代替としては、東海道本線や中央本線などの在来線、トラック、航空機などがあります。
大津波か原発事故で東海道の一部が使えなくなっても、まったく交通が遮断されるわけではありません。
さらに、大地震で東海道新幹線が使えなくなったときに、リニア新幹線が使えるかどうかは疑問です。両方とも使えなくなる可能性が高いのではないでしょうか?
老朽化した東海道新幹線を止めて保守作業をするときに、リニア新幹線が必要だという意見もありますが、リニア新幹線が代わりになるのは、東京-名古屋間の移動だけです。中間駅を使う人には代わりになりません。
東海道新幹線の保守作業は、以前のように少しずつ行うしかありません。
そのため、リニア新幹線は、東海道新幹線の代替とはなりえません。
リニア技術を世界に売る
リニア新幹線の不確定要素はいくつもありますが、それらが全部解決されたとしても、航空機や従来の新幹線に対抗できるでしょうか?
電力を鉄道の3倍使う、まっすぐ走らないとスピードが出せないため都市部や山間部は地下を走るしかない、という特性のため、競争力はありません。
スピードでは、航空機に負けます。費用対効果では、通常の新幹線に負けます。リニア新幹線を買おうという国はありません。
リニア新幹線の懸案事項
リニア新幹線に関する不確定事項ですが、見積もりが甘すぎる可能性があります。
利用客数を確保できるか
人工減少の中で東海道新幹線に対抗して、利用客数を確保することは困難です。
リニア新幹線の中間駅は、停車するリニア新幹線も少なく、他の交通手段との接続もないため、ほとんど使われることはないはずです。
そのため、利用者は東京から名古屋に行く人、または、その逆の人に限られます。
東海道新幹線の利用者の何%がリニア新幹線を利用するかは、料金と発車頻度で決まりますが、利用者がそれほど多いとは思えません。
9兆円の建設費を回収できるか
利用者数を確保できなければ、9兆円の建設費の回収もできません。
このような計画ではよくあることですが、輸送量を甘く見積もり、非現実的な費用の回収計画を立てている可能性があります。
JRが必要な資金の調達ができるか
JR東海が9兆円の資金の調達ができるか疑問です。仮にできたとしても、建設費の回収ができなければ、現在の新幹線の値上げや税金の投入も考えられます。
安全性
特に地震に対する安全性が不安です。時速500キロで走行中では、急にとまることはできません。
騒音対策
騒音がどの程度になるかよくわかりません。
電磁波対策
電磁波の影響もわかりません。
リニア新幹線のデメリット
環境破壊
リニア新幹線の建設では、地下水流動が破壊されます。水不足が起きやすくなる可能性があります。また、大量の残土も発生します。
燃費の悪さ
従来の新幹線の3倍の消費電力だと、JR東海は予測しています。この予測にも不確定要素があります。
景観
リニア新幹線の建築により景観が破壊されることは間違いありません。
乗り心地
ほとんどがトンネル内で景色はほとんど見えません。
まとめ
リニア新幹線はコンコルドのようです。燃費が悪く、環境への影響も大きくなります。
また、リニア新幹線は、現状の新幹線の値上げをしない限り、JR東海を破産に追い込む可能性があります。その場合でも東海道新幹線を止めるわけにはいきません。JALと同じように税金を使って救済することになります。
JR東海の首脳陣は、JR東海が破産するとしても、自分たちが引退してからになり、自分たちの責任は問われないと考えている節があります。
税金を投入する事態になった場合には、意思決定者の責任を追及できるようしておくべきです。
それでも、破壊された環境は元には戻りません。
しかし、原子力発電や放射能と結びつけた反対は、非論理的です。消費電力が多いことは、原子力発電を必要とすることに、直接は結びつきません。放射能と電磁波は別のものです。地下のトンネルが、地上のライチョウやクマタカに影響するという批判も疑問です。