見えないゴリラ|『錯覚の科学』

見えないゴリラという有名な心理学の実験があります。クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズの『錯覚の科学』から引用します。

二つのチームがバスケット試合をする短いフィルムを制作した。チームにはそれぞれ、白シャツと黒シャツを着てもらった。
・・・中略・・・
実験者は参加者にビデオを見せ、白シャツの選手がパスをする回数を数えてもらい、黒シャツの選手のパスは無視するよう頼んだ。
・・・中略・・・
ビデオが終った直後に、参加者は自分が数えたパスの回数を答えた。
・・・中略・・・
実験の目的はほかにあった。ビデオの途中で、ゴリラの着ぐるみを着た女子学生が登場し、選手のあいだに入り込み、カメラのほうに向かって胸を叩き、そのまま立ち去ったのだ。
・・・中略・・・
驚いたことに、およそ半数の参加者がゴリラに気づいていなかった。

私が、これを読んでイメージしたのは、白と黒のシャツを着た2チームが、バスケットボールのコートで試合をしているときに、白シャツチームのパスの回数を数えるという実験でした。試合であればボールは1つですから、パスの回数を数えることは簡単です。そのため、次の記述も素直に受け止めました。

「人が見落としをするという事実も重要だが、それ以上に興味深かったのは、自分の見落としを知ったときの、人びとの驚愕ぶりだった。」

実際のビデオは次のものです。

The Invisible Gorilla: And Other Ways Our Intuitions Deceive Us

バスケットボールコートの8分の1ぐらいの広さのエレベータホールで、白シャツ3人と黒シャツ3人が、2つのボールをパスし合っています。決して、バスケットボールの試合をしているわけではありません。

ボールが2つある状況で、白シャツ3人のパスの回数を正確に数えようとするならば、私は、2つのボールと3人の白シャツに全神経を集中させます。

そうすると、ゴリラが出てきても気づかないのは当たり前です。私であれば、自分の見落としを知ったときの反応は、次のようなものになります。

「そういう実験でしたか。確かに、2つのボールと3人の白シャツに神経を集中したら、ゴリラが出てきても気づきませんね。」

子供の時に次のような問題を聞きました。

「片方の耳しか聞こえないという人がいます。ところが、この人はウソを言っている可能性があります。本当に片方の耳しか聞こえないのか、確認するにはどうすればよいですか?」

答えは、「二人の人が左右の耳に同時に違うことを言います。本当に片方の耳しか聞こえないならば、聞こえる耳に言われたことを聞き取れますが、両方の耳が聞こえると何を言われたのかわからなくなります。」でした。

子供の時はなるほどと思ったのですが、この答えは間違っています。両方の耳に違うことを言われても、片方の耳にだけ注意を集中して容易に聞き取れます。

視覚の場合は、聴覚ほど簡単ではありませんが、視覚でも注意を集中することにより、必要なものだけを見て、不要なものを見ないようにすることができます。

見えないゴリラの実験は、錯覚が存在する証明ではなく、視覚でも聴覚と同じように注意を集中することにより、選択的に見ることができることの証明です。

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