チャンスを活かせ!『世界で勝負する仕事術』

 エンジニアの半生記です。東京大学工学部修士を出て、東芝に入りましたが、博士号をとるためにフラッシュメモリの論文をたくさん書いたそうです。1993年入社ですから、バブルがはじけた直後です。この時期でも、東芝がエンジニアに博士号を取らせる余裕のある会社であったことは、幸運だったと思います。同業他社には、それだけの余裕のある会社は少なかったはずです。

 入社直後は、ボタン押しばかりだと書いていますが、大企業が新入社員に最初にやらせる仕事は、そんなものです。それどころか、配属先の先輩2人が創造的な仕事をやっており、雑用からはい上がるためにアイデアをだせるような環境にいたことも、かなり幸運です。

 研究所閉鎖となり新たな部署に異動となっても、陰でバラバラになった先輩と多値フラッシュメモリの開発を続け、特許を取得し、国際学会で発表ができたことも、東芝がそのようなことを許す会社であったからです。仕事の時間の一部を自分の好きなことに使えることを制度にしている会社の話は聞きますが、それほど多くはないと思います。東芝で制度化されていたとは書かれていませんが、やらせてもらえたということです。

 著者も書いていますが、スタンフォード大学へのMBA留学も、同僚や上司の協力がなくては不可能だったはずです。留学期間を延長するために新しい留学制度を作ってくれたことも東芝の懐の深さをうかがわせます。

 このように見ていくと、本書は東芝の礼賛にあふれています。そんな東芝でも、著者に、組織を変えることはできなかったようです。著者は、DRAMの事業に失敗した人たちが、成功しつつあるフラッシュメモリの部門の上司として来たことに違和感を覚えています。フラッシュメモリーの成功の果実を奪い合うドロドロとした人間関係にも巻き込まれました。そんな著者は、東芝を去り、東京大学に准教授として迎えられますが、それも東芝で博士号を取得していたから可能になったことです。

 最後まで読むと、著者の最大の幸運は、就職する気がなかった就職活動で、フラッシュメモリーに出会ったことだと気づきます。

 本書から読み取れるエンジニアとしての教訓には、つぎのものがあります。

1.世界に自分をアピールできる仕事を選ぶ

 学会活動などで、社外に自分自身を売り込めるかどうかが重要です。社内に閉じ込められ、社外にアピールできないと、評価はたまたま上司になった人に左右されます。

2.チャンスは徹底的に活かす

 「挑戦しないことが最大のリスク」「勝ち残るのは、見る前に跳んで、たくさん失敗した人」と著者も言っているように、創造的な仕事ができる恵まれた配属先、留学の機会、東京大学からの誘いなど、チャンスを活かすための、ふだんからの準備や心がけが大切です。

3.競争の激しい分野は避ける

 「誰も注目していない分野、歴史の浅い分野をねらう」というように、勝てる分野を選ぶことも大事です。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローはこちらからお願いします。

会社勤めから起業するためのウェブ集客セミナー
会社勤めから起業するための7つのステップ