インターネット経由でパソコンやスマートフォンでも放送と同時に番組を見られるようにして、ネット視聴者からも受信料を徴収する意向をNHKの会長が明らかにしたと報道されています。
籾井NHK会長:ネット視聴で受信料 3年以内に徴収意向 – 毎日新聞
受信料未払率が上昇していることから、これで受信料収入を増やそうと考えているのでしたら、そう簡単に受信料収入を増やすことはできません。
受信契約は世帯単位
放送法の改正が前提となっていますから、受信機1台ずつに受信契約が必要なように改正すれば、契約数は大幅に増えます。
しかし、現在の受信契約は世帯単位です。1世帯に2台以上テレビがあっても受信契約は1件です。
日本放送協会放送受信規約第2条3項で「移動体については住居の一部と見なす」としていますから、携帯電話やスマホに付いているワンセグを含めて1契約です。
これを踏襲するならば、ネット視聴者から受信料を徴収したとしても、自宅にテレビがない世帯しか対象世帯は増えません。
テレビもワンセグもなく、パソコンやスマホがインターネットにつながっている世帯だけが、追加の対象世帯になります。
このような世帯を見つけ出すだけでも技術的に困難です。
それよりは、テレビを持ちながら受信契約をしていない世帯を見つける方が簡単です。
『平成25年度末 受信料の推計世帯支払率(全国・都道府県別)について』によると受信料の支払率は74.8%ですから、受信料収入を増やそうとするならば、これを高めることを考えるべきです。
なお、ワンセグ付き携帯やスマホのNHK受信料の支払義務については、法律上はグレーだという意見もあります。
ワンセグ付きスマホ、NHK受信料の支払義務は? | JIJICO [ジジコ] | 専門家による時事ネタコラム
放送と通信の融合
テレビの未来については、以前、『テレビの将来』の記事にも書いていますが、放送と通信の融合に向けて進んでいくことは間違いありません。
テレビの最終的な形態は、過去の放送分を含め、すべての放送をオンデマンドで見られることです。
そのためには、テレビ放送はすべてインターネット経由で行われなければなりません。そうすれば、有限の資源である電波を他の目的に使えます。
そのときには、ネット視聴の受信料も認められるかもしれません。しかし、NHKの受信料については国民の合意が形成されているとは言い難い状況です。
受信料は見たい人からのみとり、受信料を払わない人には見られないようにするのが本来あるべき姿です。
電波によるスクランブル放送は、スクランブルを解除する機器の配布に費用がかかり、割が合いません。
ネット視聴でソフトウェアだけでスクランブル解除を行う方式であれば、現実的な方法になります。
NHKはインターネット経由の放送にはスクランブルをかけ、受信料を払った人にはスクランブルを解除するソフトウェアを配布するという方式が望まれます。