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選挙の低投票率が問題になっていますが、ネット投票を導入すれば投票率のアップが期待されます。ネット投票実現までのハードルとしていろいろありますが、一番の障害となるのは何でしょうか?
少し考えればネット投票のハードルとして次のものを思いつきます。
- 個人の識別方法
- 結果の正当性の確保
- 投票の秘密の確保
選挙権を持っている人かどうかを判別し、ひとり1票の投票としなければなりません。不正アクセス等による改ざんを防ぐことは当然です。
ネット投票はどんな状況で行われるかわかりません。誰かに脅迫あるいは強要されて無理矢理ある候補者に投票させられたときのために、後から投票を修正する機能も必要です。
このあたりまでは通常のコンピュータ技術で解決できそうです。
投票の秘密の確保
投票の秘密の確保は難しそうです。誰が投票をして、誰がまだ投票をしていないかは、二重投票を防ぐ意味で記録しておかなければなりません。
それにもかかわらず、誰に投票したかが分かってはいけません。ネット投票の運用者や開発者が秘密にすれば良いという問題ではなく、誰にも調べられない仕組みが必要です。
実は、投票の秘密を確保する仕組みは、既に発明されています。電子的な二重の封筒を使います。内側の封筒として票のデータを暗号化します。それを外側の封筒に入れて電子署名するイメージです。
特定の有権者が投票した票を投票後に確認するためには、外側の封筒で行います。これで投票済みか否かをチェックできます。投票を修正する場合は、削除して新たに投票します。
開票時には、内側の封筒を取り出し混ぜ合わせることにより、外側の封筒と対応させることができないようにします。内側の封筒は、開票時に選挙管理者が開封する場合以外は開けることができません。
以上のように投票の秘密を確保するための技術的な問題は解決されています。
電子投票失敗の実績
ネット投票ではありませんが、日本で電子投票が行われたことがあります。
2003年の岐阜県可児市の市議会議員選挙で電子投票が行われました。しかし、大きなトラブルが発生しました。投票が始まると機械が次々とダウンし、長時間待たされた人の中にはあきらめて帰った人もいたそうです。開票後、投票された数と各候補者の得票数の合計が合わないということまで起きました。その結果、選挙が無効になるという事態になりました。
日本でネット投票を行うためには、この事件を乗り越えなければなりません。
ネット投票は現職議員に不利
現在の議員は、現在の選挙制度で選ばれています。ネット投票を可能にすれば、有権者の投票行動が大きく変わる可能性があります。特に今まで投票率の低かった若年層の投票率が上がると言われています。
すると現職の議員が今まで通り当選できるかどうかわかりません。一般に議員は選挙制度の変更に消極的です。最高裁で選挙は違憲状態という判決を受けても、選挙制度改革は一向に進みません。
選挙制度を変えるためには、法改正が必要です。議会での議決が必要だというところが、実際のところ一番高いハードルとなっています。