最近の経済ニュースに関し、著者が様々な警告を発しています。経済については、素人の私がわかったところとわからなかったところをまとめてみました。まず、わかったところです。
1.政府の債務は長期間で返済すればよい
ローマ帝国をはじめ滅びてしまった国はたくさんあります。政府の寿命が永遠ということはありませんが、政府の債務を人間の一世代で返済しなければならないということはありません。
2.国家と企業は異なる
企業は、不採算部門を廃止することができますが、国家は問題を切り捨てることができません。国家公務員を減らして、人件費を削減しても、失業者が増え、社会福祉費が増加します。
3.日本経済は破綻しない
負債は1,019兆円でも、資産が647兆円あり、債務は372兆円となります。名目GDPが500兆円の日本としては、それほど大きな債務ではありません。
4.消費税増税では財政再建できない
景気が悪いときに増税すると、可処分所得が減り、景気が悪化し、税収はかえってマイナスになります。1997年の橋本内閣で実績があります。
5.財政赤字のメカニズム
日本銀行の貨幣供給不足が、デフレを引き起こします。そのため、名目GDPが低下し、プライマリー・バランス(基礎的財政収支)が悪化します。
6.金融緩和を実施しても日本でハイパー・インフレは起きない
日本の製造業や輸送機械工業の供給能力は十分にあります。モノ不足は発生しません。インフレが始まったときには、金融引き締めでインフレのコントロールは可能です。日本でハイパー・インフレは起きません。
7.日本国債のデフォルトはありえない
日本国債は自国通貨建てですから、貨幣を大量発行して返済にあてることができます。そのため、日本国債のデフォルトはありえません。ギリシャは自国政府の都合で貨幣を発行することができないため、デフォルトとなりました。
8.国際機関の勧告
国際通貨基金(IMF)や世界銀行やOECDには、財務省出身者がいるので、その発言には財務省よりのものがあります。
9.事業仕分けは効果なし
事業仕分けはしましたが、法改正を行っていません。事業仕分けで廃止、縮減された事業でも、新設した交付金の充当などが行われ事業が存続されています。事業仕分けは意味がありませんでした。
次のことは、妥当な感じはしますが、素人の私ではなぜそうなるのかわからなかったところです。
■国際金融のトリレンマ
次のうち2つを達成すると残る1つは絶対に放棄しなければなりません。
・固定相場制
・金融政策の自由
・資本移動の自由
最後は、本書の内容からは理解できなかったところです。
■JPモルガン・チェース銀行の佐々木融氏の「実質実効為替レート」
通常の為替レートを対象となる2国の物価上昇率の比率で補正すると、その通貨の実質的な価値を示すように思えます。「実質実効為替レート」が円安ということは悪いことではないのでしょうか。通常の為替レートが円高で、「実質実効為替レート」が円安ということは最も悪いパターンに思えます。なぜ、「いまの円高は実質的には円安」という状態を良い状態と判断できるのかわかりません。むしろ「円高は強い円の表れ」という主張への反証となるのではないでしょうか。