独フォルクスワーゲン(VW)が、ディーゼル車の排ガスに関する試験をクリアするために、窒素酸化物(NOx)の排出量をごまかす違法なソフトウェアを使っていたというニュースがあります。
米環境保護局(EPA)は18日、独フォルクスワーゲン(VW)と傘下の独アウディの自動車で大気浄化法違反の疑いが見つかったと発表した。対象となるのは2008年以降に米国で販売されたディーゼル車5車種、計48万2千台。VWなどはリコール(回収・無償修理)に追い込まれる見通しだ。
EPAによるとVWなどは排ガスに関する試験をクリアするために、違法なソフトウエアを使っていた。窒素酸化物(NOx)の排出量が基準値と比べ40倍に達する可能性があるという。
米メディアによると大気浄化法違反で1台あたり最大3万7500ドルの制裁金が科される可能性がある。単純計算で最大で180億ドル(2兆1600億円)となる。
出典:日本経済新聞
「ステアリングの位置」「車速」「吸気圧」などから排ガス試験中かどうかを判断し、試験中であれば排ガス中の有害物質を基準値以下に抑え、試験中でなければ燃費効率を上げ有害物質を増やすソフトウェアを搭載していたということです。
このような、通常走行時に排ガス浄化装置の働きを弱める「ディフィート・デバイス(無効化装置)」は、米国の法律では使用を禁止されています。
まるで、替え玉受験のようです。あるいは、ふだんからドーピングをしているスポーツ選手が、ドーピングテストのときだけ、ドーピングテストを無効化する薬を飲むようなものです。
排ガス試験の不備を突き、排ガス試験だけはパスしますが、通常の走行では大量の有害物質をまき散らします。
なぜ、VWがこのようなリスクの高いことをしたのかわかりません。
排ガス試験をクリアすることだけを目的とした「工夫」が、このようなことを引き起こしたのかもしれません。
近視眼的な非常に狭い目的だけをめざし、同質化された集団の中で活動していると、陥りやすい罠です。その目的の意味や背景を考えずに、盲目的に進んでしまいます。
少しぐらいならかまわないだろうと、いったん違法行為に手を染めると、二度と抜け出せなくなります。そのうちに、それが当たり前になり、気にもならなくなります。
そういう意味では、他の企業の粉飾決算などの不正とあまり変わりません。
私はこのニュースを聞いたとき、VWはつぶれると思いました。
リコール費用や最大約2兆円と報道されている制裁金だけではありません。
仮にリコールで有害物質の排出量を抑えたとしても、その車の燃費効率が落ちます。VWの持ち主は、燃費効率の悪い車をつかまされたことになります。オーナーたちは集団で、VWに対し損害賠償を求めるのではないでしょうか?
VWのブランドは地に落ちました。ディーゼル以外の車も販売は激減します。
「米国の法律では」と書きましたが、ディフィート・デバイスは、日本では車両総重量が3.5トン超のディーゼル車だけが規制の対象になります。一般乗用車は規制の対象外です。
日本ではVWディーゼル車は“無罪”?:日経ビジネスオンライン
すでにヨーロッパでも不正が行われていたと報道されています。日本の自動車メーカーが同じようなことをしていた場合、違法でないとしても、大きな問題になることは避けられません。