安全保障関連法案で世の中が紛糾しています。問題の本質的部分ではなく、枝葉末節にこだわり、揚げ足取りの様相も見られます。どちらの陣営も、お互いに相手の基本的考え方に同意できないものがあります。
現代社会では右翼と左翼と明確に分けることはできなくなっていますが、便宜的に右翼と左翼という言葉を使って、それぞれの人の頭の中を想像してみます。
右翼の頭の中
古き良き日本を愛しています。親兄弟、家族や地域とのかかわりといった日本の伝統的価値観を重く見ます。古き良き日本の代表が戦前の國體です。つまり天皇を中心とした日本です。国あっての人であり、個人の自由や権利よりも國體の方が大切だと考えています。
1945年に戦争に負け、GHQに新憲法を押し付けられ、古き良き日本が壊されてしまったと考えています。
左翼の頭の中
何が何でも戦争だけは避けたいと思っています。1945年に負けた戦争では、多くの人が亡くなりました。
特に、赤紙一枚で徴兵された若者が多く亡くなり、将校には生き残った者がいました。新参兵は古参兵に虐待され、特攻隊には若者が割り当てられました。沖縄では住民よりも日本軍を守ることが優先されました。
日本軍は暴走し、無理な作戦を遂行した結果、多くの兵隊が戦わず餓死しました。日本軍は国民を守るものとは思えませんでした。
その結果、現実的に外国から攻められたときの対策を考えようとしません。あくまでも「反戦」「徴兵制反対」で、日本だけが平和であれば、それで良いと考えています。
すべて話し合いで解決し、解決できないときも無抵抗主義を貫き通すと考えています。
両者の溝を埋める方法
日経ビジネスオンラインの『脳とナショナリズムと戦争の意外な関係』というエントリによると、人間には次のような性質があります。
集団への帰属意識を高める教育を行うと、「自分が属するグループの方がそうでないグループよりも優れている」と認識するようになります。ふたつの集団を競わせる環境に置くと、自分が属さない集団に対して敵対心を抱き、紛争まで生じるそうです。さらに、自分が属する集団内において排除の論理も働くようになるそうです。
人間の持つこのような性質を理解し、自分の属さないグループへの敵対心や集団内の排除の論理を戒めなければなりません。多様なものの考え方を受け入れなければなりません。
また、現実にもきちんと目を向けることが必要です。戦争から目を背けるだけではなく、現実を直視し、現実的な対策をとっていくことも必要です。
先日このブログでも紹介した『21世紀の自由論』にもあるように、優しいリアリズムが必要です。
現在の日本では、さまざまな考え方があふれ、冷戦時代のように単純ではありません。イスラム過激派「IS(イスラム国)」、リフレ政策などの景気浮揚策、原子力発電、マイノリティなどに対する考え方でねじれが生じています。単純にレッテルを貼ったり、カテゴライズしたりすることはできません。
個別の問題ごとに、冷静に現実を分析し、現実的な政策を実行することが求められます。
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