振り込め詐欺の件数は増え続けているそうです。実際には、振り込め詐欺に使われた口座はすぐに凍結されてしまうので、現金を宅配便で送ったり、直接手渡ししたりすることが増えているはずです。
それでも大金をタンス預金している場合を除き、金融機関からお金を引き出さなければなりません。日経ビジネスオンラインの『振り込め詐欺対策、窓口の知られざる奮戦』は、そんな金融機関の奮戦記です。
これを読んで思ったのは、騙される人は騙されていると気づいても、犯人にお金を渡しているのではないかということです。
ずばり「これは振り込め詐欺だと思います」とは、言わないんですか?
A:言うこともありますよ。実はこのときも「警察を呼びたいのですが」と申し上げたので、ほぼそれと同じ事ですよね。でも、自分のお金を下ろしに行ったら、ずっと年下の窓口の人間から「あなた、騙されていますよ」と言われるわけですから、やっぱり不愉快になる方が多いですし、このお母さんの場合は「息子さんのためにウソをついている」という自覚があるわけですから、お金が引き出せなかったら息子が困ってしまう、と、こちらの言うことに耳をふさいでしまう。
なかなか「ここまでのすべてがウソ」だと認めることができない。
A:その方は結局別の支店で下ろしたり、カードを犯人の一味に渡してしまったりして、数百万円の被害に遭われてしまいました。
出典:日経ビジネスオンライン
人には、それまでの自分の判断や行動が、すべて騙されていたためだと認めたくないという心理が働きます。
自分の思考や行動の統一性を保ちたいという心理と、過去の自分を否定したくない心理です。
あるいは犯人一味にお金を払うと約束してしまったために、ウソをつきたくない、裏切りたくないという気持ちもあるかもしれません。
冷静に考えれば、詐欺犯に義理立てする必要はまったくないわけですが、正直に生きてきた人には詐欺犯が相手でも裏切ることに抵抗があります。
自分のお金を自分が引き出すのに、自分よりもはるかに若い窓口の人から「振り込みにする、小切手にする、家族の方を連れてくる」のどれかにするように言われ、激怒する人がたくさんいるということです。
窓口では、振り込め詐欺の疑いがあることを率直に伝えた方が良いのではないでしょうか?
「振り込みにする、小切手にする、家族の方を連れてくる」のどれかにするように言われるよりも、激怒する人は減ると思います。
遠まわしに言われるよりも、振り込め詐欺の疑いがあるとストレートに言われた方が、我に返る人は多いはずです。少しでも疑問に思ったら、確認することを勧めます。
自分に何か後ろめたいことがあって、お金が必要になり、正直な理由を窓口で話したくない人は激怒するかもしれません。
それを他人が止めることはできません。
窓口では、怪しければ振り込め詐欺の疑いがあることを素直に伝え、本人がだまされてもいいと言った時だけ、引出しに応じるという対応が良いのではないかと思いました。
その方が窓口の負担も少なくなるはずです。