新卒一括採用、長期雇用を前提に、日本企業は社員の育成に力を入れてきました。
ところが、社員が身につけるスキルが社外では役に立たない場合があります。
その典型的な2つのパターンについて説明します。
1.社内事情だけに精通した生き字引のような人
長い勤務経験から、社内に起こったことは何でも知っています。
工場で事故が発生したときなど、皆が原因究明に四苦八苦しているところに、同様の事故はいついつどこどこで発生したことがあって、その原因は何々だった、などと即座に指摘できることがあります。
その時の記録を引っ張り出してきて、記憶の正確さに皆が驚愕することになります。
昔の設計で、なぜそのような設計になっているのかわからないようなときに、その人に聞くと、それは○年前に誰々と誰々が議論の末に、妥協案として採用された案だということがわかります。
本来は、なぜそのような設計にするかは、設計書に記述しなければならないことですが、もれていることもあります。
社内の細かなルールにも精通しています。
滅多にない事務手続きもその人に聞けばわかります。
なぜ、そんなルールができたのか、誰もわからないものでも、そのルールの存在だけは知っています。
2.社内調整役
誰がどこの大学のどのゼミの出身か、誰と誰が同じ大学で同じ体育会だとか、事細かに知っています。
長い企業生活で社内の顔も広くなっています。
何か社内でトラブルがあっても、その人に調停を頼めば収まります。
キーマンとなる人の勘所を知っています。
人事異動の前に、その人に聞くなどということもあるかもしれません。
しかし、残念なことに広い人脈も社内に限られています。
社外の人との接触は、パートナー会社だけです。
パートナー会社には、生かさず殺さずという態度で接してきたため、仕事の発注先という以上の関係はありません。
おわりに
どちらのパターンも残念なのは、その技術や人脈が社内に閉じられていることです。
社内に閉じられた技術や人脈は、社外では通用しません。
転職するとムダになります。
技術も人脈もグローバルに築いていかなければならない時代です。
仕事の拡大と企業の成長を前提とした年功的人事制度は終わりました。
自分でキャリアを設計していく時代が始まっています。