働き方に革命を起こす『クラウドソーシングの衝撃』

クラウドソーシングの衝撃

 クラウドソーシングとは、インターネットにより不特定多数の中から人材を調達する仕組みです。

 例えば、企業の研究開発で解決できない課題の解決策を、懸賞金付きで募集します。企業は応募された解決案を検証し、最も優れた案に懸賞金を支払います。課題とは別の分野で働く人が、その分野では当たり前とされている知識を利用し、解決するケースが多いそうです。

 また、「日本語文章の英訳」や「ソフトウェアの機能テスト」といった仕事をサイト上に登録し、応募者と費用や納期を調整後、発注するという形態もあります。柔軟なワークスタイルに対応でき、子育てのために退職した主婦などに、空き時間に働いてもらうことができます。

 マイクロタスク型と呼ばれる形態は、「10秒の会議音声を聞いて文書化する」「写真を見て犬がいるかどうかを判別する」といった数十秒から数分で終了する仕事を対象としたものです。

 コンピュータで実行するには難しいですが、人間であれば誰でもできるような仕事を、人件費の安い地域でやってもらうことにより、コスト削減が期待できます。同じ仕事を複数の人に依頼し、結果が一致しているかどうか検証することにより、正確性の担保もできます。

 本書では、このようなクラウドソーシングが、働き方や雇い方に及ぼす影響について論じています。日本の大企業がクラウドソーシングの導入に躊躇し、世界の企業に水をあけられてしまうことに警鐘をならしています。また、大企業がクラウドソーシングを導入した際には、社内失業者に大きな影響があると主張しています。

 この部分には疑問があります。日本の大企業にとって、クラウドソーシング導入の最大の障壁は日本語です。クラウドソーシングに向いていて日本語を母国語としない人でもできる仕事は、大企業でもクラウドソーシングがすみやかに導入されていきます。

 日本語を母国語としない人には難しい仕事は、日本国内で行うことになります。国内の地域間賃金格差が、クラウドソーシング導入に伴う費用と比較して、割が合うかどうかで導入するか否かが決まってきます。

 大企業にクラウドソーシングが導入された場合、最初に影響を受けるのは、大企業から仕事を受けている派遣社員や下請会社です。クラウドソーシングは、人材を調達するための一つの手段になります。

 社内失業者は、直接的にはクラウドソーシングの影響を受けません。社内失業者が影響を受けるのは、雇用関連の法令が変更されたときです。雇用関連の法令が変更されれば、クラウドソーシングがなくても、社内失業者は不要とされます。

 本書では、クラウドソーシングの導入は、人件費の安い海外との競争になるため、賃金が下がると警告しています。容易に習得できるスキルしか保有していない社員は、そうなります。

 しかし、クラウドソーシングは、自分が保有する高いスキルを発揮できる仕事を見つける場でもあります。企業で高スキルの社員が不足した場合、クラウドソーシングで探すことも増えてきます。

 その賃金が、他社の社員にとって今までの賃金よりはるかに高い賃金だった場合、会社をやめて申し込む人も出てきます。それなりのリスクがありますから、実際にはあまりいないかもしれませんが、安い賃金で高スキル社員を雇っていた企業にとっては脅威になります。

 高いスキルを持つ社員には、会社にスキルに見合う賃金を払わせるチャンスになります。クラウドソーシングにより賃金の相場が明らかになります。これまでは、社内のバランスのため世界の相場よりも低く抑えられていた賃金が、高スキル社員の流出を避けるために上げざるを得なくなります。

 クラウドソーシングは、スキルの相場をオープンにし、雇用の流動性を高めます。その結果、企業の外注方針に大きな影響を与えます。働く個人にとっても、働き方を見直すことになります。これからの働き方を考える上では、必読の一冊です。

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