キャッチコピーは偶然に良いものができるだけでは、意味がありません。繰り返し良いものが作れなければなりません。そのために必要なのは論理です。「なぜ」と考えることにより、良いコピーを繰り返し書くことができます。
谷山雅計さんの『広告コピーってこう書くんだ!読本』には、そのためのヒントが31書かれています。その中から私の印象に残った7つを紹介します。
1.散らかす→選ぶ→磨く
コピーを書く作業は3つのステップから成り立っています。
散らかす
コピーを書こうとしている対象から、できるだけ多くの切り口や視点を探す作業です。そのため、コピーはできるだけたくさん書かなければなりません。
選ぶ
受け手にとって意味のあるものを選ぶ作業です。
磨く
選んだものを受け手にとってわかりやすく印象深いものにする作業です。
2.関係性から考える
たくさんのコピーを書くためには、関係性から考えていきます。例えば、自分の知り合い100人と対象との関係性から100個のコピーが書けます。
自分とは違う人について、対象に対する感情などを理解する努力も必要です。
3.短く書く
誰もコピーを読みたいとは思っていません。長いと読む手間がかかります。そのために短くなければなりません。
コピーを覚え、他の人に伝えてもらうためにも、短くなくてはいけません。
4.受け手の課題を解決する
コピーは受け手の課題を解決しようとします。受け手は自分の課題を解決してくれるものには興味を持ちます。
書き手の独りよがりではなく、受け手に価値のあるものであることが重要です。
5.意味で書いて生理でチェックする
コピーを読んだり聞いたりして受け取るときには、意味よりも先に生理的な部分で受け取ります。
そのため、コピーをチェックするときは、生理的にどう感じるかと考えて、チェックします。
6.読んだ人に広めてもらう
コピーを読んだ人に、別の人に伝えてもらわなければなりません。コピーを読んだときの気持ちだけでなく、それを伝えるときの気持ちも想像します。
みんなが言いたいことを言わせてあげることです。お国自慢などはみんなが言いたいことです。コピーを読んで、自分のお国自慢を言えれば、コピーは広まっていきます。
7.常識とコピーと芸術
常識には「そりゃそうだ」と反応します。コピーは「そういえばそうだね」です。芸術は「そんなのわかんない」となります。「そういえばそうだね」と、知ってはいるけれど、普段気づかないことにコピーの納得感が生まれます。
おわりに
「好きだから、あげる。」という1980年に仲畑貴志さんが書いた丸井のギフトのコピーがあります。35年も前のコピーですが、私も今でも記憶に残っています。
最近の若い人の中には、このコピーが名コピーだとわからない人が増えているそうです。1980年にギフトといえば、お中元やお歳暮などの儀礼的なものが中心でした。そこに、“好きだからあげる”という理由でいいじゃないかと主張したため、「そういえばそうだね」と共感したと本書では解説しています。
本書が出版された2007年では、ギフトに対する考え方が変わり「そりゃそうだ」と常識になったため、若い人が理解できなくなったということです。
しかし、これだけではありません。このコピーには若い女性が身体に包装紙を巻いた絵がついています。あきらかに性的な意味を含ませています。1980年と2007年で、ギフトに対する考え方が変わったことよりも、性に対する感覚が変わったために若い人が理解できなくなっているのです。