ユーザー企業のIT部門が、特定のベンダーに依存する状態を避けるために、マルチベンダー体制をとることは愚行だという記事がありました。
木村岳史の極言暴論! – ベンダーロックインを怖がり、マルチベンダー体制を維持する愚:ITpro
かいつまんで説明すると、IT部門の中には、特定のベンダーに依存することを恐れ、マルチベンダー体制を維持しているところがあるが、それはITベンダーに丸投げしているためにおきる愚行である、という内容です。
ITベンダーに丸投げしていると、ITベンダーに依存するしかなくなります。それは、シングルベンダー体制でもマルチベンダー体制でも同じです。
むしろマルチベンダー体制の方が、ベンダーが担当しているシステムごとに別々にベンダーにロックインされることになります。その結果、常にベンダー間の調整が必要になり、トータルの費用は高くなります。
むしろ1社あたりの発注量を増やし料金の引き下げを勝ち取った方が良いと主張しています。
確かにそのような面はあります。
大型汎用機を使っていた時代は、簡単にベンダーを変更することはできませんでした。
仮に移行に伴う作業や費用をすべて新しいベンダーが負担するという条件だとしても、ユーザー企業のIT部門も現業部門も確認作業に多大な工数を取られました。
さらに、移行後は、それまでに発生したことのないトラブルにも見舞われました。
大型汎用機の時代は、ユーザー企業がベンダーに、完全にロックインされていた状態だといえます。
その時の記憶が残っているために、マルチベンダー体制を取ろうとしているのではないでしょうか?
大型汎用機のシステムから、クライアント・サーバーシステム、クラウドシステムと変化してきたのに伴い、OSやミドルウェア、ERP(統合基幹業務システム)などは、米国ベンダーの製品に集約されてきました。選択の余地はあまりありません。X86サーバーは、どこのベンダー製でも基本的に同じです。
この結果、ベンダーの変更は容易になりました。
しかし、ベンダーに丸投げするユーザー企業では、ベンダーにロックインされる状況は変わりません。
ただし、マルチベンダーになったのは、システムごとに競争入札を実施し、受注したベンダーが異なった結果かもしれません。
競争入札による費用の削減の方が、1社あたりの発注量を増やし料金の譲歩を引き出すよりも容易です。
ベンダーに丸投げしていては、ベンダーにロックインされてしまいます。しかし、競争入札によるベンダーの選択の結果、マルチベンダーになることは愚行とは言えません。