ホワイトカラー・エグゼンプションの導入に向けて厚生省が案を示しました。対象者を1075万円以上の専門職としています。
建前上は、短い時間で成果をあげる効率的な働き方を促し、企業の生産性を高めるためと説明されています。多様で柔軟な働き方ができるとも言っています。
反対派は、長時間労働が増え、過重労働により精神疾患や過労自殺、過労死が増えると言っています。
どちらが本当でしょうか?
長時間残業がなくならない理由
長時間残業がなくならない理由については、以前、『長時間残業がなくならない理由』に私も書いています。
簡単にまとめると次のようになります。
- 人が少ない
- 納期が短い
- 仕事が遅い
- 残業が多い方が評価される
- 残業代稼ぎ
- 仕事がおもしろい
- まわりが残業しているから
- 家に帰りたくない
このうちホワイトカラー・エグゼンプションを導入して残業が減るのは、残業代稼ぎをしている人だけです。
実際にそのような人がどれだけいるかわかりませんが、現在多くの企業が導入している裁量労働制でも、残業代稼ぎは排除されているはずです。
ホワイトカラー・エグゼンプションの効果
仮に今の案でホワイトカラー・エグゼンプションが導入されたら、どれだけの効果があるでしょうか?
それを考える前に対象者がどのくらいいるのでしょうか?
年収1075万円以上の専門職で残業代をもらっている人がどれだけいるのでしょうか?ほとんどの人は裁量労働制で、残業代はもらっていないのではないでしょうか。
裁量労働制では深夜や休日の勤務では手当がつくところが多いですが、ホワイトカラー・エグゼンプションでは、なくなります。その手当の文が削減できるということはありますが、それほど大きな金額ではないはずです。
つまり、現状の裁量労働制で残業代のカットはされており、ホワイトカラー・エグゼンプションを導入してもほとんど効果はないと思われます。
ホワイトカラー・エグゼンプションのねらい
ほとんど効果のないと思われるホワイトカラー・エグゼンプションをなぜ導入しようとしているのでしょうか?
裁量労働制導入のときも、残業時間を減らすと言われました。しかし、実際に残業時間が減ることはなく、賃金カットの口実となりました。
裁量労働制がある上に、ホワイトカラー・エグゼンプションを導入しても、賃金カットはそれほど望めません。残業時間は仕事の量で決まりますから、残業時間もほとんど変わりません。
しかし、働き方の空気を変えます。おそらく、賃金は仕事の成果によって支払われるという空気が強くなります。
賃金は仕事の成果によって支払われるというのは、当たり前かもしれません。しかし、日本の大企業では、若い時に安い賃金で働かせ、中高年になると管理職にして、仕事の成果よりも高い賃金を払っています。
ホワイトカラー・エグゼンプションは、現在、働き以上の賃金を支払っている中高年の賃金引下げの理由に使われる可能性があります。
大企業の中高年には厳しい時代が来ると思われます。若い時に安い賃金で使われ、中高年になって高い給与をもらえるはずのところを給与を減らされるわけです。
それだけではありません。若いときから市場にもまれて働いていれば実力がついたかもしれません。若いときは大企業の論理の中で働いた人も大勢います。中高年になり、いきなり市場に引きずり出されても、戦うことができません。
自分の市場価値に自信のない中高年は、現在の既得権益にしがみつくしかありません。それが、ホワイトカラー・エグゼンプションへの反対運動です。
ホワイトカラー・エグゼンプションの導入は、すぐに影響はでないかもしれません。しかし、徐々に職場の雰囲気を変え、市場価値のない働き手には厳しい世の中になっていくはずです。