リストラされたり、早期退職したりする中高年が増えています。大企業で部長とか課長をやっていた40~50代の人が、再就職で何ヶ月もかけて百社以上も回っても、すべて断られることもあるようです。
『中高年の転職に見る「サラリーマンは自己表現ができない」の悲劇 | More Access! More Fun!』というエントリもネットで話題になっていました。
中高年の再就職の難しさについては、十分に理解されていないところがあります。
大企業病
大学を卒業し、すぐに大企業に入り20~30年も働いていると、その企業の常識を世の中の常識と考えがちになります。会社の中で出世することを最も重要な目標にする人が増えます。
出世するためには、上司に気に入られて、引き上げてもらうことが一番です。そのためには、上司に対する気配りが欠かせません。上司の顔色を伺うことになりがちです。上司の指示は絶対で、逆らうことなどできなくなります。
その結果、受け身の態度が習慣化してきます。逆に、外注先や部下に対しては、横柄な態度をとる人も出てきます。
大企業の管理職経験者は、基本的に受け身で、相手を格下と見れば横柄な態度をとるところが、再就職市場で嫌われるひとつの理由です。
専門がない
大企業では、若い時はそれぞれの部門で専門の仕事をしますが、年齢が上がるにつれ全員を管理職にします。
管理職の多くは、上からの指示を下に命令し、下からの報告を上に伝えるだけです。その結果、専門的なスキルが失われていきます。さらに、技術部門では技術の進歩に伴い、古い技術は使い物にならなくなります。
専門といえるものがなくなってくることが、再就職が難しくなるもうひとつの理由です。
マーケットが分からなくなる
大企業で直接お客様と接することのない仕事をしていると、マーケットがあるから、モノやサービスが売れるということが分からなくなります。
仕事とは、上司から指示されたことを社内のルールに忠実に実行することになります。
すると、何が世の中で必要とされているかという感度が鈍くなります。また、自分の得意なこと、何ができるかということも分からなくなってきます。
自分がマーケットと向き合い、自分のスキルや能力で貢献し、お金を儲けるという意識がなくなります。これが、大企業管理職経験者が再就職するときの最大の障壁になります。
大企業管理職に対する誤解
「○○会社の××部長」という肩書にこだわる大企業管理職経験者の再就職には、先のエントリで紹介していた方法も有効です。
「あなたたちは自分の名前も元の肩書も忘れて自分であだ名を付けて名札を貼りなさい」とゲームをさせることで、肩書は退職した今となっては何の役にも立たないことを知らせることになります。これは過去の肩書にこだわる人向けの方法です。
受け身だという点については、過去の肩書にこだわることとはまた別に考え、対策を立てなければなりません。
また、自分のスキルは外部では役に立たないと思っているため、ヘッドハンティング会社への登録もしません。多くの人は自分のスキルは、自分の会社の中でしか使えないと知っています。
会社の中で行った仕事は、すべて業務上の秘密になります。それを外部に漏えいした場合には、最悪の場合、訴えられて損害賠償請求を受けることになります。自分のスキルや業績としてアピールできるとしても、抽象化したものになります。
大企業管理職がとるべき対策
それでは、今、大企業にいる管理者はどうすべきでしょうか?
1990年代から大企業の倒産が珍しくなくなっていますが、自分の会社ではないと安心していてはいけません。いまさらたいした対策も取れないし、自分が退職するまで会社はもつだろうと、楽観的に考えたくなります。しかし、そこに落とし穴があります。
また、会社に65歳まで雇用されるとしても、役職定年を迎えたり、60歳になったりすれば、同じ給与や待遇ではありません。多くの企業では60歳で給与も待遇も大幅にダウンします。
会社がいつまでも存続すると思わないことです。会社はいつリストラを始めても、倒産してもおかしくないと思っておくことです。
そして、自分のキャリアを常に意識していることが大切です。社会が必要としていることで、自分のできることに何があるかを常に考えていなければなりません。必要に応じて、新しい知識やスキルも蓄えなければなりません。
先のエントリでも勧めているブログを書くことはいい方法です。自分に何が書けるかを考えることにより、自己分析にもなります。ブログの読者を考えることでマーケットの分析にもなります。
自分のスキルはたいしたことがなく、世の中で必要とされていないと感じるかもしれませんが、そんなことはありません。自分にとっては当たり前のことでも、知らない人には役に立つことがあります。
大企業管理職に不足しているのは、自己表現というよりも、マーケット感覚です。世の中で必要とされているもので自分にできることに気づく力です。
マーケット感覚については次の本が役に立ちます。