千円札が新しくなった年ですから2004年のことです。家の近くのラーメン店に入ると、注文方法が変わっていました。以前は、食べ終わってから料金を払っていましたが、最初に食券を買うようになっていました。古い千円札しか使えないと張り紙がありました。ふと見ると、二人の店員もはじめて見る顔です。メニューは、以前と変わりなく、食券を買って食べてみると味もかわりません。
食券の券売機のところで新しいお客さんが、店員に声をかけました。
「新しい千円札しかないんですが」
店員の態度は奇妙なものでした。
「古い千円札しか使えません」
両替をしようともしません。お客さんはあきらめて帰りました。
はじめは、ずいぶんと気の利かない店員だと思いましたが、そのうちに気がつきました。彼らは現金を扱わせてもらえていないようでした。経営者は店員を変えて(自ら店に立つことをやめたのかもしれませんが)、店員が信頼できないため、券売機を置き、店員には一切現金を扱わせない仕組みにしていたのでした。
小売店の経営者にとって、店員が小銭をくすねることを防ぐことは、万引き対策とあわせて課題の一つだとは聞いたことがあります。レジを置いて商品と売上金額をチェックしても、店員がレジを打たずに商品の代金を自分のポケットにいれることを見つけることは難しいようです。「レシートを必ずお受け取りください」と張ってある店がありますが、その対策だと思っています。
海外では、店員に現金を扱わせない店が多いようですが、日本にもこんな店があったことを、ちきりんさんの『世界を歩いて考えよう!』を読んで思い出しました。