自分もおそらく生きて仕事をしている13年後の2025年、私たちの働き方がどのようになっているかを『ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉』は問いかけています。
確実に言えることは、テクノロジーの進歩と人々の意識の変化から引き起こされる社会の変化です。これらは、後戻りはありえません。おそらく間違いのないことは、グローバル化です。人口構成の変化と長寿化も間違いないでしょう。意見が別れるところは、環境汚染とエネルギー問題でしょうか。
そこから、次の3つの常識のシフトが発生すると予測しています。これらのシフトは既に起こっていることであり、もしシフト前の考え方にとらわれている方がいるならば、早急に考え方をシフトすることをおすすめします。
1.ゼネラリストからスペシャリストへのシフト
ゼネラリスト的な広く浅い技能は、地球規模で安い労働力が使われ、一部は機械に取って代わられます。2025年に必要とされる技能は、価値を生み出し、希少性があり、模倣されにくいスペシャリストの技能です。スペシャリストとなるためには、同じ専門技能を持った人たちと切磋琢磨し、一万時間以上の訓練が必要です。その上で、他の専門家との差別化が要求されます。
そのためには、内発的な動機づけが必要です。子供のように遊びながら、創造性を発揮しなければなりません。他人から強いられた外発的動機では、高度な専門技能を身につけることはできません。
また、キャリアの脱皮も必要です。狭い専門分野に閉じこもり、広い視野を失ってはいけません。幅広い人的ネットワークから複数の専門技能を組み合わせるか、自分自身で複数の専門技能を身につけなければなりません。
2.競い合う生き方から協力し合う生き方へのシフト
職業生活では、人間関係が希薄になり、いつも時間に追われ、孤独を感じる傾向が強まります。そのため、人間同士の結びつきの重要性が高まります。2025年には次の3種類の人的ネットワークが必要になります。
(1)ビッグアイデア・クラウド
インターネットで結びついた大規模なコミュニティで、斬新なアイデアの源となります。
(2)ポッセ
関心分野を共有し、アドバイスや支援を与えてくれる比較的少人数のブレーンです。
(3)自己再生のコミュニティ
現実の世界で頻繁に会い、安らぎと活力を与えてくれる友人などです。
3.大量消費志向のライフスタイルからバランス志向のライフスタイルへのシフト
給料をもらうために働き、その給料を使って多くのものを消費することに幸せを感じるという大量消費志向のライフスタイルに疑問を持つ人が増えつつあります。所得を増やし、消費を増やすことが、必ずしも幸福に結びつかないことに人々は気づきました。
長時間労働による家庭生活の崩壊、テクノロジーの進化による働き方の選択肢の増加、男女平等をはじめとする社会基盤の変化など、さまざまな要因が働き方や幸せの考え方に影響を及ぼしています。
お金を最大の目的として働くのではなく、充実した経験を味わうために働くという発想の転換が起こっています。大量消費志向のライフスタイルか、質の高い経験を追い求めるバランスを重んじるライフスタイルかは、個人の選択にゆだねられています。
まとめ
2025年の子供たちへの手紙では次のようにまとめられています。全体のまとめともなりますので、ここに引用します。
(1)職業人生を通じて、自分が興味をいだける分野で高度な専門知識と技能を習得し続けること
(2)強い信頼と深い友情で結ばれた少数の友人との関係を大切にしながら、自分とは違うタイプの大勢の人たちとつながり合うこと
(3)創造的に何かを生み出し、質の高い経験を大切にすること
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