フリーエージェントは理想の働き方でしょうか?『ノマドと社畜』 | 定年起業のためのウェブコンサルティング

フリーエージェントは理想の働き方でしょうか?『ノマドと社畜』

ノマドと社畜

 本書では、「ノマド」とはフリーエージェント、「社畜」とは勤め人とほぼ同義で使われています。この記事では、より正確なイメージを伝えるためにフリーエージェントおよび勤め人という言葉を用います。

1.若者をだます人々

 本書では、「フリーエージェントになるノウハウを売る」という名目で若者をだまし、書籍やセミナーで儲けようとする人たちがいると指摘しています。

 その内容は、「フリーエージェントになりましょう」「ネットで大金持ちになりましょう」と勧めながら、自社のデジタル機器や、マニュアルを買わせたり、高額セミナーに勧誘したりするものだそうです。

 フリーエージェントとなった人には、自社の共同賃貸住宅シェアハウスへの入居や、共同事務所のコワーキングスペースの利用を勧めるそうです。

 また、経験のない人に、経験を積むためのインターンシップと称して、無償労働の斡旋や強制、さらに、低賃金労働の斡旋もあり、「貧困ビジネス」だと指摘しています。

 このようなものにだまされないように十分な注意が必要です。この話が事実だとすれば、買わされたデジタル機器やマニュアル、高額セミナーなどが本当に役に立つものかどうかの見極めがたいせつです。

 客観的な判断力を失わず、役に立たないと判断するならば、すみやかにその集団から離れる行動力が必要です。そのためには、マインドコントロールや洗脳の手法は理解しておくべきです。

 悩みを解決したり、性格を改造したりする手法と、マインドコントロールの手法は、ほぼ同じです。同じ手法が悩みの解決に役立つこともあり、正常な判断力を失わせることもあります。

 賃貸住宅やコワーキングスペースは、妥当な金額かどうか、自ら相場を調べなければいけません。無償労働や低賃金労働の斡旋や強制があれば、逃げ出した方が得策です。

2.フリーエージェントは大組織のリスクヘッジ

 著者が住む英国では、フリーエージェントには、高度な専門技術を持ち、短期契約で働きながら高給を得ている人がいる一方、技術のないフリーエージェントは、時給制の安い賃金で働いているそうです。

 フリーエージェントの増加は、多くの国で起こっています。管理されることを嫌うフリーエージェント側の理由と、外注によるリスクヘッジを意図する組織側の理由があるそうです。

 国際機関がフリーエージェントに外注して、リスクヘッジしていると書かれていますが、これは疑問です。仕事に失敗しフリーエージェントが自己破産してしまったら、国際機関としては、リスクヘッジになりません。

 国際機関とフリーエージェントほど規模が違うものの間の契約はリスクヘッジにはなりえません。国際機関で不足しているフリーエージェントのスキルを利用するために、発注するということになります。失敗に関するリスク管理は、国際機関側にも必要です。

 そもそも外注することは、一般的にリスクヘッジとはなりません。失敗した場合に、外注先の責任だとして、知らん顔するということでしょうか?損害賠償請求に対し、外注先にリスクヘッジするとは言えますが、発注元に失敗の責任は残ります。

3.労働の流動化が階級を固定化

 フリーエージェントが広まると、採用の基準はその人の「売りものになる」技術になります。「売り物になる」技術は経験を通じてしか身につけられず、そのために、学生はインターンの経験が必要になります。

 最近の英国では、インターンの経験を積むためにはお金がかかるため、貧しい家庭の子供は良い仕事につけず、階級が固定化されるということが起きているそうです。

4.フリーエージェントと勤め人の違い

 フリーエージェントは企業にとって都合の良いものですが、働く側にとっては楽なものではありません。世界中のフリーエージェントが競争相手になります。付加価値の高い技術を持たないフリーエージェントは、使い捨ての下請けとして雇われるだけだと指摘しています。

 これは、大きな組織の下請けとして働くフリーエージェントには、当てはまりますが、フリーエージェントが不特定多数の顧客を相手にするビジネスモデルには当てはまりません。

 勤め人は、毎月給料が支払われ、有給休暇もあります。経費も会社持ちで、年金や健康保険も会社が一部負担してくれます。

 一方、フリーエージェントは、事務処理もすべて自分でこなさなければならず、経費も自己負担です。病気になれば収入もなくなります。会社組織にして人を雇えば、儲かる仕組みがない限り、資金繰りに苦労します。

 フリーエージェントは、専門分野のスキルで儲けるだけでなく、営業、事務処理等すべて自分でやらなくてはなりません。そのため、フリーエージェントは孤独であり、孤独に耐えられなければなりません。

まとめ

 本書には首をかしげる記述もありますが、フリーエージェントが気楽にできるものではなく、自分にしかできない高度な技術力のない人にとっては、悪徳業者の食い物にされたり、身分が不安定な下請けとして使われるだけになったりする可能性もあることに警鐘を鳴らしています。

なお、フリーエージェントという言葉は次の本で最初に使われたと言われています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローはこちらからお願いします。