60歳以上の起業が増えています。年金の支給開始年齢が徐々に引き上げられることだけが理由ではありません。60歳ではまだまだ元気であるため、社会に貢献したいという意欲を持った人が増えているからです。
『片桐実央の実践! ゆる起業』は、シニア起業する人が必要とする情報をコンパクトにまとめた起業の教科書です。書かれていることはシニア起業だけに当てはまることではありません。シニアだけでなく、起業を考えている人全員に役立ちます。
ここでは、その導入部を紹介します。各項目は本書にのっとり説明は私が書いています。
起業の5原則
まず、起業で成功している人に共通する5原則です。
楽しいと思える仕事をする
学校を卒業して勤めた会社では、若い時は楽しいと思える仕事ができても、年とともに管理職となります。マネージメントばかりになり、仕事がつまらなくなったと感じている人もいます。
起業で、おもしろいと思えない仕事をすることはありません。楽しく、おもしろいと思える仕事をすることが第一優先です。
やりがい、生きがいを感じる仕事を選ぶ
大きな組織では、事業環境が変化したにもかかわらず、古い仕組みが残っている場合があります。そのような古い仕組みの中で働いていた人の中には、意味のない仕事だと思いながらも仕事を続けてきた人もいるかもしれません。
起業で新しい仕事をするならば、自分がやりがい、生きがいを感じる仕事をするべきです。自分で意味がないと思っている仕事では、モチベーションが上がりません。
得意分野の仕事をする
大きな組織に入ると、自分の望まない部門に配属され、不得意な仕事をやらざるを得ないこともあります。
起業では、自分の得意とする仕事をすることです。なお、自分では当たり前と思っていることが、人から見れば優れていることはよくあることです。自分の得意なことに気づいていない人もいます。
投資はできる限り抑え、利益を追求しない
シニア起業で大きな投資をすると、失敗したときに老後資金をなくすことになりかねません。投資を抑えるということは、個人が起業するときの原則でもあります。さらにシニア起業では、自己破産してやり直すにしても、若い人とは気力も体力も違います。
シニア起業では、投資は最小限にしなければなりません。逆に言えば、大きな投資を必要とする仕事を選ばないことです。
健康が一番
健康であることはすべての基本です。身体を壊しては、なにもできなくなります。
シニア起業の落とし穴
次は、シニア起業で陥りがちな落とし穴です。
現役時代のつてをあてにしすぎる
退職すると、人は潮が引くように去っていきます。現役時代に他人があなたと付き合っていたのは、あなたが組織に属していたからです。
あなたが相手に役立つものを提供できないならば、現役時代のつてを頼りにされても相手にとっては迷惑なだけです。
横柄な態度をとる
組織の中で横柄な態度が通用したのは、周りの人に職位に対して一応の遠慮があったからです。そんなものは退職したらなんの価値もありません。
横柄な態度をとるなどは問題外です。
前職の会社名や役職を名刺に書く
前職の会社名や役職など退職したら何の意味もありません。そんなものを退職してからもひけらかすなど恥ずかしいことです。相手が知りたいのは、あなたが何をできるか、何をしようとしているかです。
市場調査もせず、過度の自信を持つ
思い込みは墓穴を掘ります。きちんとした実証的なデータをもとに判断すべきです。
過去の成功体験に固執しすぎる
事業環境は刻々と変化していきます。過去の成功体験は通用しないことを肝に銘じなければなりません。
初期投資をかけすぎる
個人で起業するときは、大きな投資は避けなければなりません。やり直しができなくなります。起業の90%以上は失敗すると言われています。何度でもやり直しができなくては、成功できません。
人に相談せず、すべてを自分で進める
起業プランはできるだけ人に話してアドバイスを得ましょう。自分一人で進めていては、独りよがりになりがちです。
お金にこだわりすぎる
組織で動かすお金と個人で動かすお金では桁が違います。何のためにシニア起業するのかを忘れないようにしましょう。
シニア起業の心得10カ条
最後にシニア起業するための心得です。
上から目線にならない
大きな組織で働いていた人ほど、上から目線になっていないか気をつけなければなりません。
経験と人脈を活かす
これまで働いてきた経験はあなたの財産です。人脈はもしかしたら役に立つかもしれません。特に会社組織外の人脈の方が有望です。
フットワークは軽く
個人で動くならば、すばやく対応しましょう。調整しなければならないことは、大きな組織に比べればずっと少なくなっているはずです。また、新しい人脈作りにも気を配りましょう。
営業トークを体得
組織の中で働いていて、お客様と直接のやりとりをしていなかった人は要注意です。お客様に合わせて、わかりやすく話すことを心がけましょう。
柔軟性を持ち、お客様のニーズに合わせて方針転換
お客様のニーズのないところに仕事はありません。お客様のニーズがマーケティングの基本です。
起業目的は、やりがいのある仕事の継続
あなたの起業の目的を忘れないようにしましょう。
リスクを負わない
大きなリスクを負っていては、失敗したときにやり直しができません。若い人とは残された時間と気力、体力が違います。
事業計画は具体的に
具体的でない計画は実行できません。実行して、常に見直すことが必要です。
助成金活用やランニングコスト低減により、資金繰りを円滑化
『片桐実央の実践! ゆる起業』には、国や地方公共団体、その他公共機関などから受けられる返済の必要のない助成金の説明もあります。
黒字倒産ということもありますから、資金繰りには十分な注意が必要です。
自社紹介はITを活用
自社や商品の紹介はあらゆる手段を使いましょう。現在では、メールマガジン、Facebook、ブログ、ホームページといったインターネットを活用した紹介、宣伝で大きな効果を得られます。
おわりに
シニア起業といっても、小さく始めなければならないところは、起業全般に言えることです。好きで、得意で、やりがいを感じることで、市場のニーズがあることを探すのは、仕事探しの基本です。
『片桐実央の実践! ゆる起業』の目次を章だけ示すと次のようになります。
- 私の起業―まえがきに代えて
- 「ゆる起業」―シニア起業の特徴
- 定年後のライフプランを設計する
- 事業のアイデアを具体化する
- 事業計画書を作成する
- 売れる仕組みを考える―マーケティングとは
- 起業形態の選択
- 会計・税務と融資・助成金制度
- 販路開拓・集客
この記事で紹介したのは、第2章の一部です。他の章では、個人事業主と法人の違い、法人の種類と違い、助成金制度など勉強になったところが満載でした。
シニアだけでなく、起業を目指す人におすすめです。
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