コンピュータが過去の芸術作品をランク付けしたというニュースがありました。
Computer algorithm picks history’s ‘most creative’ paintings (Wired UK)
コンピュータの判断した芸術性とは
米国のラトガーズ大学のコンピュータ科学者が、「クリエイティビティ」を独創性と影響力と定義し、「クリエイティビティ」の高い作品をランクが高いと評価するアルゴリズムを開発しました。
芸術作品の色やタッチ、表現の対象などあらゆる要素を考慮し、過去の芸術作品がお互いにどのくらい似ているかを基準として、芸術作品のネットワークを作成しています。
62,000の絵画にこのアルゴリズムを適用し、ランク付けを行いました。
結果は、他に似ているものがない絵画が高くランク付けされ、似ているものが多い絵画は低くランク付けされています。
これをもって、コンピュータが芸術作品を評価したと考えるのは早計です。これは単に似ているという観点から、過去の芸術作品をネットワーク化したにすぎません。他の芸術作品と似ていないものを高くランク付けしただけです。
このアルゴリズムで高いランクを得られる絵は、比較的容易に描けます。単に、62,000枚の絵画で描かれていない対象を使われていない色やタッチで描けばいいだけです。
検索エンジンとの類似性
この芸術性を判断するアルゴリズムは、検索エンジンのアルゴリズムと似ている面があります。
当初の検索エンジンは、他のサイトからの被リンクを評価することにより、サイトの価値を判断することにある程度成功しました。
しかし、そのアルゴリズムを逆手にとり、意味のないサイトを量産しリンクを張ることにより、被リンクを増やす行為が蔓延しました。その結果、価値の低いサイトが検索されることになり、検索エンジンの有用性が失われかけました。
検索エンジンの危機でした。そのままでは、誰も検索エンジンを使わなくなってしまいます。しかし、アルゴリズムの改善により、価値の低いサイトを排除することに成功しつつあります。
これからも、検索アルゴリズムの裏をかくような新たな手段が発見されるかもしれません。いたちごっこの面もありますが、検索エンジンのアルゴリズムは、不正な手段を排除し続けていくはずです。それでなければ、検索エンジンの存在意義がなくなります。
コンピュータが芸術性を判断する意味
芸術作品をランク付けするアルゴリズムも改善を続ければ、人間の判断に近づけることは可能だと思います。
しかし、芸術作品のランク付けをコンピュータにやらせる意味がどこにあるのでしょうか?
検索エンジンは、莫大な数のサイトから、人間にとって価値のあるサイトを選び出し、検索ユーザに提示するという意味があります。
莫大な数の作品の中から、芸術性の高い作品を抽出するというニーズがあるでしょうか?
インターネット上に存在する莫大な数の画像から、芸術性の高い画像を抽出するというニーズでしょうか?
似ている画像を抽出し、著作権に違反する画像かどうかを判断するニーズはあるかもしれません。しかし、それは芸術性とは無縁です。
技術的に可能になれば、新たなニーズが生まれることも考えられます。コンピュータが芸術性を判断することは、人間でいえばまだよちよち歩きの状態です。ニーズもあるかどうかわかりません。