罰則で人を動かすよりも、インセンティブを使う方が賢い方法です。
しかし、小学5年生にTOEIC〇〇点以上なら給食費無料としたら、貧乏な家の子は一生懸命勉強するでしょうか?
資格の取得により、制服代や修学旅行費などを無料にしたら、勉強に励むでしょうか?
『インセンティブ・システムと弱者支援の違い – Chikirinの日記』に、そんなインセンティブが書かれていました。
逆に「あいつがガリ勉なのは家が貧乏だからだ」とバカにされることを恐れるのではないかと思います。
この種のインセンティブが最も働いたのは、戦後から高度経済成長時代にかけてです。
小作人の家では冷害になると娘を売らざるを得ない時代が終わり、農地解放が行われました。
憲法では「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別」が禁止されました。
進取の気性にあふれた若者は、より良い生活を目指し、必死に勉強し、働いたと思います。そのとき、大きな障害は学校の授業料でした。
だからこそ、義務教育の無料、教科書の無料はありがたいことでした。
戦前からの身分制度は崩壊し、貧困の連鎖は断ち切られました。
現在、再び格差が固定化し、貧困の連鎖が問題となっています。
その大きな原因は、知的なことに興味を持たない人は教育に関心を示さず、その子供が十分な教育を受けられず、知的なことに興味を持たなくなっていることに思えます。
そのため、高校授業料の無料化も効果を期待できませんが、テストの点数や資格取得による給食費や制服代の無料化も意味がありません。
知的な興味を持っている子供に対しては、その内発的な欲求を満たせるような教育を受けられる社会が必要です。
また、知的な興味が少ない子供に対しては、適性を見極め、適切な職業に就くことができる教育システムが大切です。
必要なインセンティブは、それぞれの適性に合わせて勉強し、働けば、明るい未来があるという希望です。
知的能力が高いことは、人間社会で暮らしていくために有利なことですが、そうでない人でも豊かな生活ができる社会が必要です。
なお、暴飲暴食をやめない人に身体を壊した人の実態を知らせたり、万引きや恐喝を繰り返す若者に長期刑に服している囚人の後悔を伝えることは、効果的なインセンティブだと思います。