脳のクセを知っておくと、脳の能力を最大限に活かすことができます。それは、仕事や勉強を効率的に行うことにもつながります。本書では、脳科学の観点から、脳のさまざまなクセについて述べています。ここでは、そのうち気になった3点について、紹介します。
1.脳は妙に不自由が心地よい
私はこの題からすぐにエーリッヒ・フロムの『自由からの逃走』を思い出しました。人々は自由よりも束縛されることを好み、自由にされると何をして良いかわからなくなるというものです。
脳は、基本的に反射で動くようです。それを無意識とも呼んでいます。そして、行動はしばしば無意識により決定されています。そのため、良い行動をするためには、良い経験を積んで、良い反射をしなければなりません。そのためには、良い環境にいることが必要です。
ここまでは、わかります。『自由からの逃走』も、無意識に流されがちな人間の本性に対する警告だと思います。
しかし、自由意志の存在を否定していることが、理解できません。本書によると、自由意志とは錯覚に過ぎず、行動は環境や刺激、あるいは習慣によって決まっているそうです。一見、自由意志で行っていると本人が思っていることでも、それは錯覚であり、自分で決めたつもりになっているだけだということです。
これは、納得がいきません。例えば、二人でじゃんけんをしていると想定します。何も考えずにじゃんけんをするとクセで出すものが決まります。ところが、相手のクセを読み、次に何を出すかを決めるときでも、環境や習慣によって何を出すかが決まっているというのでしょうか?Aさんは最初にグーを出すクセがあるから、パーを出そうと考えて、パーを出すことが、環境や習慣によって決まっているとは思えません。
本書で紹介されている実験をみても、人間の行動に無意識の影響が大きいことを示すものにすぎず、自由意志の存在を否定するものにはなっていません。
2.脳は妙に瞑想する
瞑想を始めるとガンマ波と呼ばれる脳波が出るそうです。未熟な人は精神を集中しないとガンマ波が出せませんが、ベテランでは集中しなくてもガンマ波が出るようになるそうです。
そこから集中とは不自然なものであり、本来は非集中の状態でものごとをなすべきだという話が展開されています。シマウマが草を食べることに集中していたら、ライオンが近づいても気づかないことになります。自然界では、非集中の能力に長けた動物が生き残っているそうです。
この部分もあまり納得がいきません。ガンマ波と集中の関係も、集中と適応の関係も、まだまだ新しい理論が発見されるような気がします。
3.脳は妙に使い回す
ふつう人は加減算をするときは、数直線をイメージして、加減算に合わせて、眼球が動くそうです。実際に動かなくても、動かしているような脳波が観察できるそうです。
私が加減算でもつイメージは、違ったものです。数はそれぞれ固まりとしてのイメージがあって、その固まりがくっついたり、離れたりして、新しい固まりをつくるイメージがあります。このあたりは、個人差でしょうか。
数に対する感覚が人によって異なるとしても、脳が身体感覚や身体運動をもとに思考することについては、合点がいきます。身体運動をすると、ニューロンが10倍強く活動するそうですが、有酸素運動をすると頭が良くなることとも通じるような気がします。
まとめ
脳を知ることは、自分を知ることでもあり、知的活動をはじめとする精神活動を行う上で有効です。自由意志の問題は、今ひとつ納得がいかないので、もう少し調べてみます。