二次破綻必至とささやかれていた日本航空の再建を果たした稲盛和夫さんの考え方です。稲盛さんには、日本航空の倒産と日本経済の状況が二重写しに見えるそうです。ここでは、その考え方をキーワード中心に紹介します。
1.燃える闘魂
本書のタイトルにもなっていますが、「経営にはいかなる格闘技にもまさる激しい闘争心が必要」ということです。「絶対負けない」「何がなんでも」「勝利まで戦い抜く」という闘争心が、不可能だと思われる経営目標でも実現可能にすると主張しています。
いまの日本に何より必要なものも「なにくそ、負けてたまるか」という闘争心だとしています。「なにくそ」と歯を食いしばり、「絶対に負けるものか」と、努力と創意工夫を続けることで日本の未来は開けると信じているそうです。
2.世のため人のため
経営は、「世のため人のため」という高邁な精神を基に行われなければなりません。人々の幸福に貢献しなければなりません。
そもそも、資本主義はビジネスを通して「世のため人のため」に貢献することから、はじまっています。マックス・ウェーバーが『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で指摘したように、資本主義の担い手はキリスト教の教える隣人愛を貫き、産業活動で得た利益を社会発展のために活かすべきです。
3.足るを知る
欲望を節度あるものに変えること、すなわち「足を知る」ことが必要であると説いています。過剰な欲望を抑え、節度あるものに変えることで、人類が地球に与える負荷を許容範囲に押さえ、人類の破滅を避けるということです。
発展途上国と先進国の人々が、地球上で一緒に暮らし、お互いに発展していくためには、「足るを知る」ことにより、資源とエネルギーの消費を抑制するしかありません。大量生産、大量消費、大量廃棄という現代社会を見直さない限り、人類の未来はありません。
4.徳をもってあたる
経営における判断基準とは、「人間として何が正しいのか」という問いに集約されます。「人間として正しいことを貫く」という判断基準は、普遍的なものであり、人間としての基本的な徳性に起因しています。それが、「徳をもってあたる」ということです。
国家や民族や文化や宗教が異なっても、「人間として何が正しいのか」という判断基準は、ビジネスの上でも、人生を生きていくうえでも基本となります。それは、「利他の心」に通じます。
5.心を変える
日本航空の再生には、心が大きな役割を果たしたそうです。それは、社員の幸福を第一とした企業理念、何としても利益をあげる強い意志、お客様に最高のサービスを提供する高邁な精神です。社員の心が変わり、行動することにより、日本航空の再建は実現しました。
まとめ
稲盛さんは、日本航空の再建と同様に、日本経済も「燃える闘魂」で再建できると言っています。日本経済の再建に必要なものは、経営者が「燃える闘魂」をもって、会社を引っぱり、産業界の先頭に立つことだと断じています。