大企業で学べることとベンチャー企業で学べることは違います。そのリスクも考えることにより、どちらが有利か比較をしてみます。
1.大企業で学べること
大企業でしか学べないことは、大規模プロジェクトの経験とその企業が大企業となったノウハウです。
(1)大規模プロジェクトの経験
大企業で学べる一番のことは、大規模プロジェクトの経験です。個人や中小企業では、下請けとして、あるいは派遣社員として、大規模プロジェクトに参加することはできますが、大規模プロジェクト全体の計画を立て、推進し、管理することは、できません。
大規模プロジェクトでは、プロジェクトの目的と制約条件を明確にし、関係する組織などと調整しながら、必要な資金・人材・資源などを手配し、計画を立て、遂行します。これは、大企業・大組織でしか経験できないことです。
しかし、そこには大きな落とし穴があります。プロジェクトマネジメントしかできなくなる可能性があります。プロジェクトで使われる技術については、理解しておく必要はありますが、自ら手を下すことはありません。自分で、その技術を使うためには、別にスキルを磨かなければなりません。
大規模プロジェクトを継続して受注できていれば良いですが、不況などで受注が途絶えた時には、仕事がなくなる可能性があります。その場合、比較的小規模のプロジェクトを担当することになりますが、大規模プロジェクトとは、やるべきことが異なります。
また、大企業で大規模プロジェクトのプロジェクトマネジメントを経験できるのは、かなりの経験を積んでからになります。それまでは、大規模プロジェクトの一部を担当するか、複数の中小規模のプロジェクトマネジメントを行うことになります。
そこにもリスクがあります。大規模プロジェクトの一部を長期間担当していると、他の部分がわからなくなります。他の仕事も経験するために他の人に引き継ごうとしても、引き継ぎが難しくなってきます。その技術自体が陳腐化し、時代遅れになるリスクもあります。
会社の事業戦略上、重要度が低いと判断されたプロジェクトは、パートナー会社に発注されることになります。場合によっては、主な仕事がパートナー会社への発注になってしまうこともあります。
何年もそのような仕事ばかりをしていると、スキルも低下します。仕事とは、パートナー会社に割り振って、発注手続きをすることだと勘違いをしてしまう人さえ出てきます。
(2)大企業となったノウハウ
大企業には、大企業となった理由があります。そこには、学ぶべきノウハウがあります。ただし、そのノウハウは既に時代遅れとなっている可能性もあります。その場合には、反面教師として、学ぶことができるかもしれません。
2.ベンチャー企業で学べること
ベンチャー企業では、会社としての仕組みがまだ整っていません。そのため、自分で何もかもやらなければなりません。そのごちゃごちゃの中で、成果を出すことにより、学べることがたくさんあります。
日々の雑務に追われ、自分のスキルが向上したという実感が得にくい場合もあるかもしれませんが、仕事で成果を出すという経験が積めます。
まとめ
大企業で学べることは、大規模プロジェクトの経験が最大のものですが、そこにはさまざまなリスクがあります。ベンチャー企業では、実務を通じて学べることがたくさんあります。
研修制度についてどちらが優れているかは、一概に言えなくなってきています。研修で学べるものは、スキルのごく一部だけです。
大企業で学べるものが危うくなっている現在では、新入社員にとって大企業とベンチャー企業とどちらが成長できるかと考えると、ベンチャー企業に分がありそうです。