ブックライターとは、著者に代わって本を書く仕事です。十数時間じっくりと著者にインタビューして本を書きます。
著者は、多くの場合、本を書くことを専業にしていません。文章を書きなれていません。そんな人の代わりに本を書きます。
著者には本業に専念してもらいながら、著者の持つコンテンツをベストのタイミングで出版する方法です。
ゴーストライターという呼び名もあります。私は、昔は、読者をだましているようでよいイメージを持っていませんでした。人に書いてもらった本をあたかも自分が書いたように見せかけて、出版していると思っていました。
本を書いた人の側からは、本当は自分が書いたにもかかわらず、その名を知られることなく、著者に本を書いた名誉を奪われた怨念のようなものも感じました。
実際には、そのようなことはないと書かれています。著者がいなくては、コンテンツがありません。そのコンテンツを出版することが社会的に大きな意義があるときに、著者が多忙あるいは文章を書きなれていないという理由で出版されないのは、社会にとって大きな損失です。ブックライターの存在は合理的な仕組みです。
ブックライターの名前も、目次の後のスタッフ欄に「構成」「編集協力」として、あるいは奥付に担当編集者などと並んで出ていることもあるそうです。
報酬は、多くの場合、印税を著者と分けるそうです。配分はさまざまで、初版はブックライターのリスクが大きいため、多めにブックライターに割り振る場合もあるそうです。
本書には、出版に関するさまざまな情報が含まれています。その中から、印象に残った3点を紹介します。
1.“相場”を理解すること、“読者”をイメージすること
書店に頻繁に足を運び、どんな本が出ているのか、売れているのか、注目されているのかをチェックします。また、どんな人が読者になるのか、どんな人に役に立つのかについて考えます。
マーケティングで3Cといわれる市場・顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)をしっかりとおさえることは、出版も同じです。マーケティングの一般論がそのまま成り立っている部分です。
2.素材を引き出すためにブックライターを活用する
ベストセラーをたくさん出している人から、文章は書かずにインタビューだけしてもらいたいという依頼を受けたことがあるそうです。
自分の「素材」を自分で引き出すのは意外と難しいものです。時間がかかります。そんなときにベテランのブックライターのインタビューにより、読者の聞きたい話を引き出してもらいます。
自分の頭の奥にある「素材」が引き出されるのは、自分と同レベルの人と、リラックスして関連する話題について話をしているときです。
米国のIT企業では、そのための休憩所を設けているところもあります。新しいアイデアが、そのような場所の会話から生まれています。
ベテランのブックライターのインタビューを受けるということは、ひとりではなかなか出てこない「素材」を引き出すよい方法です。
3.「250枚を1本」ではなく「5枚を50本」
本1冊は400字詰め原稿用紙で250枚から300枚になります。これだけの量を書こうとすると膨大な量の文章を書かなければならないという気になります。
そこを小見出しのついた5枚くらいの一塊の文章が50あると考えます。5枚というと2000文字です。2000文字程度の文章が50個集まって本ができていると考えると、時間をかければ書けそうです。
課題は分割して解決します。これも課題解決の一般的な方法です。
まとめ
本書には、一般にはあまり知られていない出版に関するさまざまな情報が含まれています。ブックライターを志す人だけでなく、自ら出版しようと考えている人にもおすすめの一冊です。