私は、Amazonが創業以来ずっと赤字を続けていたころ、Amazonは消えてなくなると思っていました。
当時は、インターネット上に店舗がいくつも開かれていましたが、どこもあまり売れていないようでした。
本は、どこでも同じものが買えます。品質は出版社により保証されていると考えられます。特に、日本では再販制度により、どこで買っても同じ値段です。
そのため、本はインターネット上の店舗で売るには、最も適した商品だと思っていました。
その最もインターネット販売に適した商品である本を売っているAmazonさえ、なかなか利益をだせないことに、理由もわからないままインターネット販売の難しさを感じていました。
初めてAmazonを利用した時のことは覚えていませんが、あるとき朝注文した本が、その日のうちに届いたことに、びっくりするとともに感動を覚えました。
Amazonは本の買い方を変えました。
それまでは、少しでも気になる本は見つけたときに買っておかないと、次に見つけるときに非常に苦労することがありました。
出版社に在庫があれば取り寄せてもらうことはできましたが、非常に時間がかかりました。そのため、本の取り寄せはめったに頼みませんでした。
本屋で見つけた少しでも気になる本はすべて買っていました。そのため、積読本は山のようになりました。
その習慣はなかなか消えませんでしたが、最近はようやく本は見つけた時ではなく、読みたいときに買うようになってきました。
本を読み終わり、後で参照することがないと判断したものは売るようにしてから、自宅の本の量はようやく減り始めています。
『ジェフ・ベゾス果てしなき野望』は、本の買い方を変えさせたAmazonの内側を明らかにしています。
ここでは、私の印象に残った3点を紹介します。
低い利益率
顧客第一主義で価格を下げると利益率が低くなります。
Amazonの場合は、それが強みになります。
利益率が低ければ、ライバル企業が参入しにくいということです。顧客が集まり市場を守りやすくなります。
まさしく逆転の発想ですが、これができるのは資金の調達に不安がないためです。
創業時から売り上げがすさまじい勢いで伸びるため、資金の調達には困らなかったことが、本書からうかがわれます。
Amazonの将来性に疑問を持つ人はいましたが、それ以上に成長を信じ資金を提供してくれる人がいたということです。
ガゼルプロジェクト
出版社に書籍の電子化を依頼する際、「チーターが弱ったガゼルに近づくようにAmazonは小さな出版社にアプローチしなければならない」と檄を飛ばしたガゼルプロジェクトと呼ばれる活動がありました。
そこでは、書籍の電子化を渋る出版社には、サイトにおける検索や顧客への推奨の優先順位を下げるという脅しも行われました。
社内で50人以上の部署の管理者は一番成果をあげていない社員をクビにしなければならないという規則もあるそうです。
「有能でなければジェフにズタブロにされ、捨てられます。有能なら、もうダメというところまで働かされます。」という言葉も紹介されています。
このあたりは、GEの元会長兼CEOであるジャック・ウェルチや故スティーブ・ジョブズをほうふつさせるところがあります。
評価レビュー
Amazonには利用者による評価レビューの機能があります。否定的なレビューを書くこともできます。
否定的レビューを受け容れることは、サプライヤーから反対されても、顧客の判断を助けると突っぱねているそうです。
しかし、特に書籍のレビューは、購入していなくても書けることもあり、特定の著者に対し常に否定的なレビューを書く人が存在します。
そのため、そのことを知らずにレビューを読むと判断を誤ることになります。
私自身は、Amazonのレビューはほとんど読むことがありません。あまり参考にならないためです。
せめて購入した人だけがレビューを書けるようにするだけでもだいぶ違うと思いますが、Amazonがそこのところを修正しない理由がわかりません。
まとめ
事業で成功した人には、ジェフ・ベゾスのような人がしばしばいます。ところが、大きな組織では受け入れられることはありません。
やはり、人はその人の長所を活かし、短所があまり支障にならないところで活動することが大切なことだと改めて感じさせる本でした。