「日本でネットはテレビの脅威にならない」という記事が話題になっています。これは、2011年3月7日の記事で、当時の日本テレビ会長、氏家齊一郎氏が東洋経済オンラインのインタビューに答えたものです。
これに対し、「ネットを知らない人の時代遅れの発言」といった反応が多いようです。また、反論もあります。
「ネットはテレビの脅威にならない」は正しい。 | 中嶋よしふみ
反論の趣旨は、収益力も影響力もテレビ局はネット動画と比較にならないほど強く、ネットはテレビの脅威にならないというものです。この反論は妥当なものです。
しかし、近い将来、テレビ局はネットの脅威におびえることになります。
テレビの将来
私は以前、『テレビの将来』という記事を書きました。
将来、テレビは過去の放送分を含め、すべての放送は、オンデマンドで見られるようになると予測しています。
そのときにものをいうのは、どれだけ優良なコンテンツを保有しているかです。その意味で、現在のテレビ局はしばらく安泰といえます。
電波からネットへの移行
しかし、現在の電波を中心としたインフラは変わります。電波は有限の資源であり、放送できるチャネル数は限られています。
そこでネットが使われるようになります。リアルタイムの放送は電波で供給され、オンデマンド放送はネットでの供給される時代を経て、すべての放送はネットで供給されるようになります。
有限の資源である電波は、電波でしかできない用途に使うためです。
ここで実質的に放送と通信の区別がなくなります。
テレビ局の提供する番組とアマチュアの供給する番組が同じ土俵で競争することになります。
それでも、過去の豊富なコンテンツを保有し、優良なコンテンツを制作できる人材を抱える既存のテレビ局の優位は変わりません。
しかし、この段階でテレビ局への参入障壁がなくなります。
有限の電波を独占的に使用し既得権益を享受してきた既存のテレビ局だけでなく、どこの会社でもテレビ番組を制作し放送できるのです。
現在でも、直接番組の制作にかかわっているのはテレビ局の社員ではありません。どこの会社でも番組を放送できるようになれば、番組制作をそのノウハウを持っている人たちに発注することができます。
そのときこそ、テレビ局にとってネットが脅威となるときです。
すなわち、技術的にテレビ放送がネットでできるようになった現在、有限の資源である電波をテレビ局に独占させる合理的な理由はありません。
電波行政がこの方向に舵を切ったとき、ネットはテレビ局の脅威になります。テレビ局はあらゆる手段を使って抵抗するでしょうが、時代の流れに逆らいきれるものではありません。