バスの手配を忘れた元JTB社員のウソがニュースになったかと思うと、日経ビジネスオンラインには、妻の入院で上司が左遷されたという記事が出ていました。
「えっ! “妻の入院”で上司が左遷?」 ウソが招いた大惨事:日経ビジネスオンライン
バスの手配を忘れた事件では、なぜあんなウソの手紙を書こうと思ったのか理解に苦しむところです。
普通に考えると、バスの手配を忘れたことに気づいた時点で、上司と一緒に必死になってバスを探し回るのではないかと思います。
報道されている以上のことはわかりませんが、バスの手配などのチェック体制の有無や、上司に話ができない何かがあったのかと気になります。
日経ビジネスオンラインの「えっ!“妻の入院”で上司が左遷?」の話を要約すると次のようになります。
大事なプレゼンを予定していた部下が寝坊し、穴をあけてしまいました。部下は妻が倒れて緊急入院しICU(集中治療室)に入ることになったためとウソをつきました。
それを聞いた部長がたまたまその病院の院長と知り合いだったため、部長が院長に電話したところで、ウソがばれ、部長は大恥をかきました。
その結果、部下の上司は、監督不行届きで2ヶ月減給のあと、左遷となったということです。ウソをついた部下も半年後に自ら会社を辞めたそうです。
大事なプレゼンを予定していた部下が寝坊したとして、代わりにプレゼンできる人がいなかったのかと疑問に思いました。
部下の上司が責められるとすると、監督不行届きではなく、危機管理があまいということです。
私も似たような経験があります。大事なプレゼンを予定していた部下が、朝、会社に来ませんでした。携帯に電話をかけましたが、留守電の状態です。
プレゼン開始の30分前ぐらいになって、やっとその部下から私の携帯に電話がかかってきました。「すみません、寝坊しました」と。
プレゼンは、部下が朝いない時点で、別の者を割り当てていたので何の問題もありません。
大事なことほど、万が一のことを考えて、対策をとっておくのは常識です。
本当に、監督不行届きが責められたならば、部長が赤っ恥をかいたことが、処分に大きく影響したということでしょう。
日経ビジネスオンラインの記事では次のように書かれています。
人間には極度の不安や緊張の中で、「どうにか自分を守っていこうとするココロの働き(=自己防衛機制)」という本能が備わっているので、どんな人でも、危険なウソの罠にはまる可能性はある。
大抵の場合、無意識に自己防衛機制は機能する。なので、周りが考えるほど、当人には、「ウソをついた」という自覚がない。また、どんな強靭な精神の持ち主でも、不安と緊張から1秒でも早く脱出したいと願うので、この本能から逃れ、危険なウソの囁きをかわすには相当の勇気がいる
プレゼンに寝坊したときのウソは、ちょうどこれにあたります。しかし、バスの手配を忘れてウソの手紙を書いたのは、違うように思います。
手紙はとっさには書けません。よく考えたうえで書いたことです。
ウソがウソを呼び、手に負えなくなる話は、昔からたくさんあります。それが、身に染みてわかっている人は、あえてウソをつこうとは思いません。
ウソをついて目の前の危機を乗り越えた経験を持ってしまった人は、ウソをつくことに慣れてしまいます。
ウソをついてごまかせばなんとかなるという経験が、ウソを加速させます。そして、いつかはウソがばれて破滅します。
ウソをつくかどうかの選択は、このことを知っているかどうかです。ウソをついてはいけないと聞かされていても、ウソで困難を乗り越えた経験を持ってしまった人は危険です。