『ソーシャルメディアの何が気持ち悪いのか』 by 香山リカ | 定年起業のためのウェブコンサルティング

『ソーシャルメディアの何が気持ち悪いのか』 by 香山リカ

ソーシャルメディアの何が気持ち悪いのか

LINEの利用者が5千万人を超え、ソーシャルメディアもレイトマジョリティが使い始めました。

しかし、ネットやソーシャルメディアでは、以前にはなかった奇妙なことが起きています。

ソーシャルメディアの何が気持ち悪いのか (朝日新書)』では、それを「気持ち悪い」と表現しています。なぜ、そんなことが起きたのか振り返ってみます。

24時間自分をさらけ出す

TwitterやFacebookで自分をさらけ出す人がいます。食べた料理やお酒から、ベッドルームでの房事についてまで投稿する人がいるそうです。

これは、単にTwitterやFacebookの投稿が公開されている範囲を知らないだけだと思います。普段タイムラインやニュースフィードに流れてくる友達しか見ていないと勘違いしているだけです。

出会い系サイト

男女の出会いの機会を提供するサービスでは、複数の男性が手分けをして、ひとりの女性のふりをしているそうです。

シフト制で交代しながら、客の男性が有料サイトをたくさん使うように仕向けるわけです。

金儲けのためなら、いろいろなことを思いつく人がいるものです。だまされる人は、どのあたりで気づくのでしょうか?

ネタ消費

Facebookに投稿するために、高級レストランで食事をする人もいるそうです。2万7千円のディナーを3万円のディナーを食べたと書くことは許されても、食べてもいないものを食べたと書くことは許されないと感じるようです。

見栄を張る人は昔からいました。昔は服やバッグで見栄を張っていればすんだのでしょうが、Facebookを使うようになり、食べるものや泊まるところにも見栄を張らなければならなくなっただけです。

非抑制性と匿名性

ネットでハンドルネームを使うと匿名だと勘違いしがちです。

「匿名性」は一部の人にとっては、都合の良い隠れ蓑になります。現実社会では抑圧されていた欲望や本音をおおっぴらにします。

その結果、大胆な発言、攻撃的な発言をするようになります。罵詈雑言、誹謗中傷とエスカレートしていきます。

電子掲示板やTwitterのように複数人が書き込む場では、集団心理も働きます。いわゆる炎上が起きます。

これは、匿名であるという思い込みが、ネットの環境において、人間の醜悪な面をあらわにしたと考えられます。

通常はフィクションの世界にしか出てこない攻撃性、残虐性が、あたかも戦争をしている時のように出てきます。

戦争時には生命の危機にあるという極度の緊張が、攻撃性、残虐性を発揮させることになります。匿名だという誤解とネットの仕組みが同じような結果を生んでいます。

ネット多重人格

ネットの世界で別人格になる人がいます。ネット上で女性のふりをする男性などです。ネット上では、現実の自分とはまったく違う自分としてふるまう人もいます。

これも地理的・身体的・社会的制約により抑圧されていた欲望が、「匿名性」とネットの環境で解き放たれたと考えられます。

ネット de 真実

「ネットではじめて真実を知った」と言っている人がいます。

それまでとは違った考えに触れた結果、ネットから特定の意見、考えだけを抽出し、それを真実だと信じているようです。

いわゆる陰謀論と同じです。一度、権威・権力に対する強い不信を持つと、それに対する別の説明を頭から信じてしまう傾向が、人間にはあるようです。

1960年代にマルクス主義に触れた学生が、極左主義に走った過去を思い出します。

ゆがんだ平等主義といびつな正義感

ソーシャルメディアでは、正義や道徳を振りかざす人がいます。

正義や道徳を振りかざすことが、享楽的なはけぐちになっているためです。

「匿名性」の高いネットでは、どんなに正義や道徳を振りかざしても、お前は違うじゃないかと非難されることがありません。

人は容易に他人に対してだけ道徳的になります。

ネット依存

ネットを長時間使い、健康や生活に支障をきたす人がいます。

ネットのサービス自身が、ネット依存を促していると言えます。ネットでの売り上げを上げるため、サービス会社は利用者を中毒状態にしようとしています。

「感動」の感染

YouTubeやFacebookで感動したという投稿が感染症のように広まることがあります。

その内容が事実かフィクションか、後で問題となる場合も増えてきましたが、広がっている人たちの間では、あまり問題にされません。

人は、他人の感情に左右されやすい傾向にあります。大勢の人が「感動した」と言っていることについては、自分も「感動した」と言いたくなります。

さらに、アクセスを集めたい人たちが意図的にやっているところがあります。一般的に感動したという話はアクセスを集めやすいものです。「いいね!」もたくさんつきます。

「いいね!」がたくさんついている投稿に自分も「いいね!」を押すことにより、ソーシャルメディア上でのつながりを深めようと考えています。

まとめ

このように見ていくと、「気持ち悪い」と思えるネットの行動は、ネットの仕組みを知らないか、匿名だと誤解しているところから起きています。

ネットの仕組みを知らない人は、プライバシーを公表したり、だまされたりします。

匿名だという誤解が、抑制されていたものを開放し、炎上を引き起こしたり、正義感を振り回したりすることになります。

ネットの力により、人間の本音や欲望が大規模に拡散していると考えられます。

これがネットの気持ち悪さの正体です。

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