新しいビジネスモデルをゼロから考えてもなかなか思いつきません。同業者のビジネスモデルをまねても価格競争に陥ります。異業種のビジネスモデルであれば、よいヒントが得られます。
ここでは、『異業種に学ぶビジネスモデル (日経ビジネス人文庫)』から、ビジネスモデルを考える上で有効な7つの視点を紹介します。
1.顧客の再定義
「誰が顧客か」を見直すことです。顧客を意思決定者、購買者、使用者に分類した場合、誰を対象にするのか、真の顧客は誰かを問い直します。
病院の顧客としては、患者だけでなく、家族も考えられます。ベッドメーカーの顧客としては、そこに寝る病人だけでなく、介護者もあり得ます。結婚式場では、花嫁だけでなく、ヴァージンロードを一緒に歩く父親も顧客になります。
2.顧客価値の再定義(サービス・ドミナント・ロジック)
サービス・ドミナント・ロジックとは、モノはサービスの一形態ととらえる考え方です。この考え方に従えば、すべての企業は顧客にサービスを提供しています。製品やサービスを顧客が使用するときの使用価値が重要です。
「ドリルメーカーはドリルを売っているのではなく、穴を売っている」のです。ランニングシューズを売るのではなく、走る環境を売ります。顧客はコンピュータが欲しいのではなく、コンピュータを利用した結果が欲しいのです。
3.顧客価値の再定義(マイナスの差別化)
サービスの中から必要なものだけに絞ると、ビジネスモデルの転換になります。これが、マイナスの差別化です。
たばこの吸えない喫茶店、航空機を一種類にして過剰なサービスを廃止した航空会社、ひげそり・洗髪を廃止した理髪店などです。
一般の喫茶店が禁煙にすると顧客が減ります。国際線も国内線も持っている航空会社は、機種の統一ができません。既存の理髪店がひげそりや洗髪をやめると、価格を下げざるを得ません。
必要なサービスだけでスタートした会社に、既存の会社は追随することができません。
4.顧客の経済性
顧客の経済性とは、製品やサービスを購入することにより、どれだけ価値が上昇するかです。トータルコストが減少する場合と、固定費が変動費に変わる場合があります。
購入後のメンテナンスから廃棄までを含めたトータルコストで判断します。壊れにくければ、トータルコストが下がります。修理費がかかりません。機器の停止による機会損失もありません。
固定費が変動費になれば、損益分岐点が低くなり、赤字になるリスクが減ります。稼働時間だけに課金するビジネスモデルや成功報酬型のビジネスモデルが、これにあたります。
5.バリューチェーンのバンドリング/アンバンドリング
事業の川上から川下までのバリューチェーンを束ねることがバンドリング、切り離していくことがアンバンドリングです。
複数の企業で行っていたビジネスをすべて自分で手がけることが、バンドリングです。前後の工程をまとめて顧客に提供します。
所有と運営を分離し、所有者は面倒な運営から手を引き、運営者は運営ノウハウを武器に再生事業、運営受託業務などに事業を拡大することは、アンバンドリングです。
コンビニに設置するATMに資源を集中投下して、他行からの引き出し手数料を稼ぐ銀行もアンバンドリングです。
6.経営資源の持ち方
ヒト・モノの経営資源の所有方法を変えます。
ヒトから属人性を排除し、誰でも同じサービスを提供できるようにすることです。オペレーションを単純にして、人件費の安いパートタイマーやアルバイトでも運営ができるようにします。
スターをつくらず、交代・代役を容易にした劇団も同じです。
モノに関しては、見える部分は差別化し、見えない部分は効率化します。見える部分を差別化すると高価になります。その分、見えない部分を効率化して、原価を抑えます。
7.定番の収益モデル
そのほかに定番と言われているビジネスモデルがあります。
裁定取引
安いところで買って、高いところで売ることです。金融業界ではなじみの方法です。
レベニュー・マネジメント
価格を弾力的に調整しながら、販売量と販売単価の積を極大化する手法です。ホテルではよくあります。
証券化
資産を分割して売りやすくします。不動産の証券化も増えてきました。
ポートフォリオ
保有する資産の組み合わせを調整し分散投資します。金融業界では常識です。
ジレットモデル
後から必要となる補完製品を売る手法もあります。カミソリの刃、コピー機のメーターチャージ、プリンタのインクなどです。
ネットワーク効果
加入者の増加により、得られる便益を増加させる手法です。FacebookなどのSNSが典型的です。
フリーミアム
無料版で多数の顧客を誘引し、魅力を高めた有料版を購入してもらいます。Skype、Dropbox、Evernoteなどでおなじみです。
おわりに
これらの手法を知っておくことが、新しいビジネスモデルを考え出すヒントになります。