図書館は新刊書の貸出をすべきではないと考える理由 | 定年起業のためのウェブコンサルティング

図書館は新刊書の貸出をすべきではないと考える理由

図書館

出版社・書店・作家が図書館に対し、「貸し出しの1年猶予」を求める文書を送る予定だというニュースがありました。

本が売れぬのは図書館のせい? 新刊貸し出し「待った」:朝日新聞デジタル

新潮社を旗振り役に大手書店やエンターテインメント系作家らが、著者と版元の合意がある新刊について「貸し出しの1年猶予」を求める文書を、11月にも図書館側に送る予定だ。

出典:朝日新聞デジタル

図書館が本を貸し出す意義

図書館では昔から本の貸し出しを行っていました。しかし、なぜ、図書館では本を無料で貸し出すのでしょうか?

出版社や書店、著者が、売れるはずの本が、図書館のために売れなくなっていると考えるのは自然のことです。

ググってみたら次の資料を見つけました。

公共図書館の基本的機能は資料提供であるとして,すべての住民へあらゆる資料を提供すること,図書館は国民の知的自由を支え,知識と教養を社会的に保証し,住民の自由意志による自己教育を資料の提供によって支える機関である

出典:『市民の図書館』と「貸出」の意義

図書館は「すべての住民へあらゆる資料を提供する」という崇高な使命を担っているといいうことです。

現在の技術であれば、この目的を満たすためには、すべての資料を電子化し、全世界に対し、検索サービスを提供することが理想です。

もちろん、昔の本の装丁などを調べるなどの目的のために、実物の本を保管しておくことも必要です。電子化したデータだけで十分と言っているわけではありません。電子化することにより、情報の検索と拡散が容易になると言っています。

実際、これはGoogleの目指しているところでもあります。

このとき問題になるのは、著作権との兼ね合いです。著作権の残っている本に関しては、勝手に電子化するわけにはいきません。

この考え方を広げれば、図書館も著作権の残っている本については、貸し出しすべきでないということになります。

法律的には、著作権法の次の条文が、図書館が無料で本を貸し出しできる根拠になっています。本の貸出サービスは、お金を取らなければ、著作権者の許諾なしで図書館でなくても誰でもできます。

(営利を目的としない上演等)
第三十八条
4 公表された著作物(映画の著作物を除く。)は、営利を目的とせず、かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、その複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供することができる。

図書館の貸出の売上への影響

図書館の貸出は、本の売上にどれほどの影響を与えているでしょうか?

これについては、以前、関連するエントリを書いています。

出版不況でも、読まれている本が増えている理由

過去15年間で、書籍販売部数は減っていますが、公立図書館の貸出冊数は増えています。2010年に、公立図書館の貸出冊数が書籍販売部数を抜きました。

その理由のひとつとして、図書館が便利になっていることがあります。「カーリル | 日本最大の図書館蔵書検索サイト」を使うと、どこの図書館でどの本が貸し出し可能か分かります。

ブックオフやアマゾンでの古書の売上も増えていますから、新刊書の売上減がすべて図書館のせいとは単純には言えませんが、影響は受けているはずです。

図書館は役割を変えるべき

図書館は貸出冊数で評価されるようです。そのために人気のある新刊書を貸し出しています。しかし、これは著者、出版社、書店の利益を侵害する行為です。図書館は、貸出冊数を増やすという考えを早急にやめるべきです。

経済的に本を買えない人にも、本を読む機会を与えるという使命が図書館にはあるという説もあります。しかし、本を買えないほど経済的に困窮している人で、本を読む人がどれほどいるのでしょうか?

図書館が「すべての住民へあらゆる資料を提供する」ためにあるならば、やるべきことは貸出を増やすことではありません。

やるべきことは、著作権の切れた本を電子化し、全世界に提供することです。また、絶版となり入手困難な本について、全国の図書館間の相互貸出などに力を入れるべきです。

新刊書の貸出は、図書館のやってはならないことです。新刊書を読みたい人は、著者に敬意を払う意味で、本を買って読むべきです。

図書館の関係者は旧来の考えにとらわれることなく、本当に「すべての住民へあらゆる資料を提供する」ために、現在の技術で何をすることが効果的なのかを考え直す時期に来ています。

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