えこひいきは一般に悪いことと思われています。
私の父が50歳を過ぎても言っていたのは、戦前の話ですが、小学校の先生が進学予定の生徒に良い成績をつけ、就職予定の生徒に悪い成績をつけていたということです。
事実かどうかは確かめようもありませんが、明らかに自分よりも成績の悪い同級生が、進学予定だからと良い成績をつけられていたら面白くなかったと思います。
家が貧乏なため進学できない生徒は、教師を恨んだはずです。
この話はえこひいきとは少し違うかもしれませんが、教師たるもの成績はきちんとつけるべきでしょう。
こんな話を思い出したのは次の記事を読んだからです。
この店では、お客様を直近の購入時期と累計購入額で9種類に分類しています。直近の購入時期が1年未満、1年以上3年未満、3年以上で分けています。累計購入額は、100万円以上、30万円以上100万円未満、30万円未満です。
直近の購入が1年未満で累計購入額が100万円以上が、一番いいお客様です。お客様が困っていたら、社員が飛んで行き、庭木の水やり、買い物代行、家の掃除などもやるそうです。
経営資源は限られていますから、どこに経営資源を投入するかは会社の戦略です。この会社では、優良顧客に経営資源を投入する仕組みを作り上げています。
全方位的に経営資源を投入できるのは大企業だけです。
中小企業は、限られた経営資源を経営戦略に従って投入しなければなりません。この会社では、優良顧客に経営資源を重点投入するという戦略をとっているわけです。
特に起業したばかりのときは実績がありません。経営資源は実績を作ることに投入することになります。
自分が好きで得意でやりたいことを、一番喜んでくれるお客様に合わせて提供することになります。
お客様に合わせるため、お客様にとって一番の商品やサービスを提供できます。
それが差別化戦略です。自分が好きで得意でやりたいことがマーケットのセグメントです。その中で一番喜んでくれるお客様がターゲットです。
ターゲットに合わせて、事業戦略を練ることになります。ターゲットは、最初はひとりでも構いません。そこで実績を作ってから広げていきます。
差別化戦略はしばしば誤解されます。
典型的な誤解のひとつは、競合他社と違っていれば良いという誤解です。単に違っているだけでは何の意味もありません。ターゲットに対し、より良い価値を提供できる違いでなければなりません。
別な誤解は、ただ単にターゲットを絞り込めばいいというものです。
絞り込んだターゲットにとって、あなたが一番にならなければなりません。あなたの商品やサービスがターゲットにとって一番良いものになるようにターゲットを絞りこまなければなりません。
それでなければ、ターゲットを絞り込む意味がありません。
もうひとつの誤解は、ターゲットを絞り込みすぎると、十分な売り上げが上がらないという誤解です。
ターゲットを絞るのは、最初の実績を作るためです。自分の商品やサービスを一番喜んでくれるターゲットに訴求するために、あらゆる戦略を考えます。
普通は、ターゲットに近い見込み客も興味を持ちます。仮にターゲットに近い見込み客がいないとしても、実績ができれば、ターゲットを広げていきます。
弱小企業は、お客様をえこひいきしなければいけません。あなたの商品やサービスを一番喜んでくれるお客様に、最高のものを提供しなければなりません。