昨年の運動部顧問教師による体罰を苦にした生徒の自殺事件に、執行猶予付きの有罪判決が下されました。しかしながら、体罰がなくなる気配はありません。なぜ、体罰がなくならないのか考えてみました。
1.有効だと信じている
体罰がなくならないのは、それが有効だと信じている人たちがいるからです。彼らは、自分自身の経験やまわりの人の経験から、体罰が有効であると信じています。
体罰を受けた影響として、「気持ちが引き締まった」「指導者が本当に自分のことを考えていると感じた」と答える人が少なからずいます。
2.学校に役立つ
スポーツが強くなることは、学校を有名にし、生徒を増やします。体罰が有効であると信じているため、体罰は学校にとっても経済的に役に立つことになります。
3.進学や就職に役立つ
生徒にとってもスポーツで良い成績を残すことは、進学や就職に役に立ちます。生徒にとって役に立つことは、保護者や教師も支持します。
ここでも、体罰が有効であると信じていることが、体罰が最終的には生徒のためになると解釈され、保護者や教師も全面的に反対しない理由となります。
4.仕返し
指導者が選手時代に体罰を受けた場合、自らが指導者となった時に、同じことを選手に行うことがあります。潜在意識による仕返しです。
そのようなことは、社会的に許されませんから、表だって言う人はいません。本人も意識することなく、潜在意識の奥に隠しています。
5.感情のコントロールができない
未熟で感情のコントロールができない指導者がいます。そのような指導者は、選手が自分の指示したとおりのプレーができない、やろうとしないといった理由で感情を爆発させます。試合に負けた腹いせに選手に暴力をふるう指導者もいます。
まとめ
「仕返し」をしたり、「感情のコントロールができない」指導者は、選手も見抜きます。選手からは恨まれ、卒業すれば見向きもされなくなります。これからは、このような指導者は傷害罪で訴えられることが増えると思います。
問題は、選手や学校のために、スポーツが強くなるために体罰が有効だと信じている指導者です。同じように信じ込んでいる、選手や親や同僚の教師たちです。
はたして、スポーツが強くなるためには体罰は有効なのでしょうか。ここで注意しなければならないのは、体罰を受けてどれだけ強くなるかと、何の指導も受けずにどれだけ強くなるかを比較してはいけないことです。何の指導も受けずにいるよりも体罰を受けた方が強くなることはあります。
比較しなければならないのは、体罰を受けてどれだけ強くなるかと、体罰なしで適切な指導を受けてどれだけ強くなるかです。有力なスポーツ選手や名コーチといわれる人には体罰有害論を唱える人がいます。
体罰に頼って作り出される人間は体罰によってしか動かない。そんな人間を社会は必要としていないことを指導者もスポーツ界も認識する時期にきている。
私は、体罰は必要ないと考えています。「絶対に仕返しをされない」という上下関係の構図で起きるのが体罰です。監督が采配ミスをして選手に殴られますか? スポーツで最も恥ずべきひきょうな行為です。殴られるのが嫌で、あるいは指導者や先輩が嫌いになり、野球を辞めた仲間を何人も見ました。スポーツ界にとって大きな損失です。
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体罰がなぜいけないのか。それは、指示待ち人間を作るからです。体罰を受けた選手は萎縮し、指導者の顔色ばかりうかがうようになる。暴力で追い込むと、選手の競技力を向上させるどころか、将来の人生にも悪い影響を与えるのです。
私は、体罰が有効だと信じ込んでいる人は、効果的な指導方法を知らないか、できないか、受けたことがない人だと思います。そのため、体罰をなくすためには、スポーツの指導方法やノウハウを広く広めることが有効だと考えます。