機械が人間の仕事を奪っていくといわれています。医師、弁護士、教師などの仕事も機械に代わっていくという人もいます。
すると「機械 VS 人間」という構図で仕事をとらえることになります。機械より人間が優れているところはどこか?いつごろ機械が人間に追いつくかという観点です。
本当にそうでしょうか?機械は道具です。人間ができない行為を行ったり、より効率的に実施したりするためにつくり出したものです。
そのため、あるところまでは、機械は人間に使われる道具にすぎません。あるところまでは、です。
あるところとは、機械が自律的に動き出すところです。自ら学習し、自らの判断で行動するようになるところです。
こうなると道具として使うことができなくなる可能性があります。道具として使おうとすると、人間の意図に反する行動をする可能性があるからです。
しかし、仕事のパートナーとして「機械と人間」が一緒に仕事をすることはできます。機械が人間よりも優れている点に関して、機械のアドバイスを受ける形になります。
医師の仕事に当てはめて考えてみましょう。
医師の機械は、世界中の症例を記憶し、適切な診断ができるようになります。ある患者のデータを見て、診断を確定するために必要なデータがあれば、それを指摘することもできます。
人間の医師と機械の医師で次のようなやり取りが行われます。
機械「この患者は○○病である可能性と△△病の可能性があります。治療法がまったく異なるので、××検査をして、病気を確定してください。」
人間「××検査の結果、〇○病であることがわかりました。」
機械「○○病には、A治療が最も効果的で、B治療が2番目に効果的です。」
人間「この患者はA治療が嫌いなので、B治療を行います。」
この機械が自律的に治療できるならば、患者の気持ちに反してA治療を行うでしょうが、人間のパートナーとして働くことにより、アドバイスをするだけにとどまります。
患者の好き嫌いで治療法を選択することがあるのかどうかは、私は知りませんので、あくまでも例と考えてください。
このくらいまで進歩した機械ができたとしたら、人間の患者は機械の診断を直接受けたいと思うでしょうか?
さらに進歩して、患者と話し合いB治療を行うことに合意することも可能になったらどうでしょう。機械は外見も声も人間そっくりでいわゆる「不気味の谷」の問題はクリアしているとします。
※「不気味の谷」とは、機械が人間に似てくるときに、あるところから化け物のように不気味と感じる現象のことです。
このあたりから意見が分かれるところだと思います。機械の医師のほうが安く診察・治療してくれるなら、機械の医師がいいと考える人もいることでしょう。
しかし、機械に任せるのは嫌だと感じる人もいます。
機械が人間の形をしているのではなく、画面と音声入力のやりとりだとしたらどうでしょうか。
患者とのやり取りの結果、B治療をやりましょうと画面に表示します。この場合には、人間の医師に相談したくなる人が多いのではないでしょうか。
私は、機械に診断から治療までを任せることに抵抗を感じる人がいるために、医師の仕事が完全に機械にとってかわられることはないと思います。あくまでもアドバイスをするレベルにとどまります。
弁護士や教師も同じです。完全に機械に代わられることはありません。
以前、『人工知能やロボットが発達しても最後まで人間に残る仕事』の記事にも書きましたが、自動化のニーズのない仕事と機械にやってほしくない仕事は、人間が行うことになります。